『生命の時間図鑑』
ヘレン・ピルチャー
吉井大志翻訳監修
グラフィック社
\2400+
2024.1.
図鑑は楽しい。どこを開いても、見入ってしまう。だが本書は、できるなら順番に読むとよい。テーマは、生物と時間。サブタイトルとして「グラフで見る動植物の体内時計」が掲げられているが、イラストとグラフが、数値化されたデータを並べて見せてくれる。
例えば、「人間の活動がクジラにストレスを与える」という標題で、1870年以降、クジラの耳あかに含まれるコルチゾールというホルモンのレベルをグラフにしている。ストレスを感じると、このホルモンが分泌されるのだという。すると、1960年代に、商業捕鯨がピークに達すると、ストレスレベルが最も高くなっている。しかし、1972年に海洋哺乳類保護法などが制定されると、ストレスレベルは一気に下がっているのが分かる。
クジラは、日本に対する風当たりの中で取り上げられた可能性も否定できないが、私は「家畜化の年表と場所」というのにまず惹かれた。イヌ35000年前からユーラシア大陸で家畜化が始まっており、ネコは9500年前と新しい。ウマだと3500年くらいの歴史しかないそうだ。
ビーバーが2週間ほどでダムや巣を作る仕組みがイラストで示されているのも、興味深かった。こうした細かな点でも、分かっていることはきちんと説明されているから、見ていて飽きない。
絶滅した種の割合が、1555年以降グラフ化されているが、1850年から急に割合が上昇し始めている。ある意味で、生物の種が消えてゆくことは、この地球上では、あたりまえの出来事だったのである。だがそれだから、人間が何をしてもよい、というふうには考えたくない。人間の手によって、絶滅しなくてよかった種までが、危機に陥っていることには、人間は責任をもたねばならないだろう。そして私もまた、その人間の一人である。この位置づけだけは、読者は忘れてはならないと思う。
冬眠の期間やその仕組みが生物毎に異なること、植物が1日にどのくらい成長するのかのグラフ化など、思わずめくる頁の手を休めてしまうものもたくさんある。孟宗竹は1日に1メートル伸びるというのは、驚異的である。
プラナリアの再生能力は有名だが、ウーパールーパーも肢が再生する。そのメカニズムの図解は、本当に不思議だ。睡眠時間の一覧は、改めて動物により如何に違うかを考えさせる。ネコは16〜18時間だというが、キリンはせいぜい4〜5時間、野生だと立ったままのこともあり、昼寝は30分未満ずつなのだという。イルカは途切れ途切れに8時間、睡眠中脳の半分だけを使って眠るそうで、半球睡眠というらしい。コアラの22時間は仕方がないかもしれないが、だとしたら動物園で、起きているのに出会えたらかなりラッキーだということになるだろうか。
交尾にガラガラヘビが23時間かけるというので思い出したが、以前、ヘビについて曰くありげな言及をする下ネタがあったような気がする。クジラが30病以下だというのはえらく短いが、さて、ヒトはどうなのか、ここのグラフからは外れている。
食べ物が口から肛門まで運ばれるのにかかる時間を「腸管通過時間」と呼ぶのだそうだが、アカアシガメは300時間以上かかるというから驚きだ。草食動物が比較的時間がかかるのは予想がついたが、コアラは6日間くらい体内に留まるというからなかなか大変だ。
息を止められる時間については、ビーバーでも15分近くいけるらしいが、クジラやアザラシの種類では、1時間以上のものも多々あるようだ。
面白そうなところだけを拾おうとしても、まだまだ紹介できそうである。このような比較による図鑑は、生物により様々な特徴があることを知らされる。これもまた、生物について知るためのひとつの道であろう。ヒトだけではない、生命の姿を私たちは、改めて目の前に突きつけられる思いがする。誰もが一度は眺めて欲しいグラフであろうと思う。

た
か
ぱ
ん
ワ
イ
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