本

『暮らしに生かす旧暦ノート』

ホンとの本

『暮らしに生かす旧暦ノート』
鈴木充広
河出書房新社
\1575
2005.8

 暦というものには、惹きつける力がある。そもそもどのようにして、それらの行事が決められたのか、いやそもそもどうして一月は30日前後なのか、どのようにて一月一日は決められたのか、閏年はどのような意味なのか……疑問に思い始めると、すべてのことが疑問になってくるのが、カレンダーの神秘である。
 その中からこの著者は、旧暦と呼ばれるものに焦点を当て、それが暮らしとどのように関わり合っているか、を分かりやすく説明しようと努める。
 事実、この著者の説明は、実に丁寧であり、分かりやすい。趣味のようにして、暦のことを調べ、ホームページとしても出しているという著者である。説明への配慮も、そうした経験がものをいうのであろうか。温かな言葉が、心地よく読者を包むであろう。
 そもそも旧暦とは何のことなのか、にも触れる。その語りは、語り部のように、興味深く私たちの耳を誘う。押しつけがましくなく、それでいて、他人行儀でもない。客観的な視点をもちつつ、十分聞き手を楽しませてくれる。
 伝える情報についてもなかなかのもので、私もカレンダーについての話は好きなほうだが、この本で初めて「なるほど」と膝を叩いたようなことが幾つかあった。
 何気なく当たり前だと思って過ごしている日常に、どんな意味や歴史が隠れているのか、それを知ることで、私は今一人で勝手に生きているのではない、多くの人々の知恵や愛によって支えられているのだ、という思いがしてくる。そんなふうに捉えるのは、決して大袈裟ではないと思う。
 日本の伝統とは、「国」という概念から始めなくても、十分伝えられるものなのだという気も、改めてしてくるように感じた。




Takapan
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