本

『教養のための理科・基礎編』

ホンとの本

『教養のための理科・基礎編』
後藤卓也
誠文堂新光社
\1,800
2003.8

 サブタイトルに「小学理科か・ん・ぺ・き教科書」と付いている。中学受験専門の学習塾のテキストを一般用に編集し直したものだという。それを、雑誌『子供の科学』を出す会社がきれいな形で生み出してくれた。紙の質もいいし、カラー写真が実にきれいだ。
 塾のテキストか、とお思いかもしれない。いや、ここには問題というものは一切ない。身近な自然現象や自然の仕組みについて、実に丁寧で的確な解説が、系統だってなされている。なんら化学記号も数式も使わずに、これほどまでに納得できる説明ができるのかと、ほとほと感心する。
 虫がさなぎの中でほぼどろどろ状になっていることは知っていたが、脳のほか、腸の一部はそうならないということを、この本で初めて知った。気温が零度より高くても池の氷が凍る仕組みが、実に分かりやすく説明されていた。やかんを熱したときに現れる最初の泡と、いよいよ沸騰して出てくる大きな泡の違いが書かれ、やがて洗濯物を乾かすことへの知恵へとつながっていく。ジャガイモと聖書の関係を見て、なるほどと膝を叩いた。
 子どもの「なぜ?」に答えるための本は数多いが、この本は、Q&A形式ではないにも拘わらず、読んだとき、これでどんな子どもの質問にも答えることができる、という気にさせてくれる。これを、中学受験生だけに独占させるのなど、もったいない。間違いなく、大人が楽しめるものだ。文系とか理系とか、理科が苦手だとかそんなことは関係ない。塾の教師も、目が開かれるような説明に出会うそうだ。
 これはいい。楽しい本の代表となるだろう。




Takapan
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