本

『京都自転車デイズ』

ホンとの本

『京都自転車デイズ』
ワークルーム編著
光村推古書院
\1575
2009.5

 京都に住んでいたころ、奈良に行ったときに自転車が似合うと思った。大和路は、自転車が似合う。観光地を次々と訪ねるには遠すぎて困るかもしれないが、たとえば飛鳥では、貸し自転車が実によい気分だった。
 京都は、それに比べて、自転車で届く範囲にたくさんの観光地や訪問する面白いスポットがいろいろある。この本は、そういうところを訪ねるコースを提供している。というより、実際に走ったところを紹介してくれている、といったところか。
 そのコースは、何も最短距離を教えてくれるものではない。たぶん散策である。博多の山笠のように、初めの場所のすぐ近くをまた通ることもある。スポットを訪ねることと、何より走る過程が楽しい。旧い街並みを眺めながらのんびり走るというのが気持ちよいこともあるだろう。
 マップだけでなく、そのスポットの風景写真が並ぶ。もちろん店や工場などの様子も分かるが、ただ何々通というだけの風景や、曲がり角の写真もあるから、たしかに親切である。実際に走るという視点に立った、ていねいで気配りの届いた構成になっている。
 それに、そもそも京都を知る者にとっては、あそこだ、というように、ただ眺めるだけで楽しめる本になっている。たんに店の宣伝であるようなものとは違い、爽やかな風を届けてくれる本だと感じる。
 それはまた、自転車で走るときのその注意やマナーなどもきちんと解説されているところからも、うかがえる。
 店やスポットの開いている時刻やお勧め品の価格などもふんだんに紹介されており、楽しいが、だからなおさら、この本はこのままでは数年の間このまま使えるというものではなくなる。旅行情報誌のような内容を有しているから、こうまで立派な装丁で単行本として出してよかったのかどうか、は疑問が残る。週刊誌のような情報誌形態で、もう少し値段を落として千円くらいで出版し、毎年新しい情報を加えて再販していくというようにすれば、この自転車デイズというスタイルが、定着する道が拓かれたかもしれない、などと考えるのは、安易な一読者の思いつきであるのだろうか。




Takapan
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