本

『京都ぼちぼち墓めぐり』

ホンとの本

『京都ぼちぼち墓めぐり』
アリカ編著
光村推古書院
\1575
2011.3.

 図書館から本を借りると、まあしばらく寝かせておいて、一冊だけを持ち運び読み始めるというのが普通だ。そんな私が、借りてくるなり何気なく開いてみて、ついそこからずるずるとはまっていくという本が今回の墓めぐりである。
 もちろん、京都だからというのもあるかもしれない。自分の住んでいたところ、歩き慣れた街、いろいろ巡ったところ、大人を迎えた時期には刺激が大きかった。憧れて住むことにした京都である。好奇心を伴いつつ歩いた。もともと大した知識がなかっただけに、より新鮮でもあった。
 この本は、「歴史人物に会いにいく」というサブタイトルが、涼しげな色で書かれている。そうして、歴史人物の墓が写真にあり、その場所の紹介と、実際にそこを訪問するにはどうすればよいかかガイドされている。中には、この取材は別として、一般には入ることができないというところもあるのだ。しかし、そういうものばかり集めたのであっては、実際に行くことのできないところばかり案内する本という意地悪の代表のようになってしまうから、この本はそうはしない。ただ制限の必要や、拝観料の必要などを教えてくれるのだ。子どもは駄目だというところもある。それぞれ事情も様々である。
 どだい、肉親でもない人の墓地を訪ねるというのは、やや危ない。盗掘もありうるし、破壊などの凶行も現実に懸念される。安直に有名人の墓がありますよ、と宣伝するのも憚られるであろう。だからこの本も、少し勇気が必要な制作であったのかもしれない。
 そこで、実際に訪ねる場合のルールもこの本にはちゃんと紹介されている。そもそも非公開が基本であることを認識した上で相談すべきこと、墓に触ってはならないこと、花や供え物は持ち帰ること、線香ひとつにしても許可を得るべきこと、そんなことが丁寧に説明されている。そもそも墓地とは、こうした心づかいができない人が訪ねるようなところではないはずなのだ。
 それにしても、トップバッターが「江」とくるのは、2011年の大河ドラマのせいだろう。まずそこからかな、と思うあたりなのは、今年売り出す本の意気込みであり戦略というものであろう。かなり古い歴史的人物から、20世紀の有名人まで様々な墓地が紹介されている。平安の都を思うと、まさに歴史の教科書を見るような思いがする。
 時に驚く。徳川家康の墓があり、歯がそこにあるのだという。
 人の一生を思う上で、墓というモチーフもよいものだ。厳粛な思いにさせられる。また、読者もそういう気持ちを抱いて訪ねなければなるまい。それにしても、「はじめに」に書いてあるが、こうした墓地巡りを愛する人々のことを、「ハカマイラー」と呼ぶというのは、本当なのだろうか。




Takapan
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