本

『かわいい写真を撮る方法。』

ホンとの本

『かわいい写真を撮る方法。』
本間直子
成美堂出版
\1050
2009.9

 小さめの週刊誌のような恰好の本。タイトルの文字が手書きで、かわいい。
 そもそも、この本は全般に「かわいい」を乱発している。ほかに言い方はないのか、とかみつきそうになっても、ひたすら「かわいい」で澄ます。それがタイトルにあるようにウリなのであるから、仕方がない。
 それで、いいのだ。
 ところが、そうした表向きの様子に関係なく、中身が実にシャープである。沢山の写真の実例が挙げられており、その写真はどこをどう工夫しているか、全部コメントがしてある。大変な労力である。いたずらにデジカメ写真を散らしておけば本の体裁になる、などと考えていてはできない仕上がりである。
 著者は、日大芸術学部写真学科卒だという。伊達ではない。およそ写真撮影にまつわるあらゆることをこの本は教えてくれていると言ってもよい。対象は静物である。子どもや動物も一部あるが、やはりポートレイトや風景となると、また別の知識が必要になるかもしれない。しかしながら、「かわいい」モノを撮るというコンセプトにあっては、必要十分な知識とテクニックを教えてくれるのである。これには驚く。
 私も写真歴は長い。もちろん、芸術学部などではないし、プロのような腕前であるはずがない。しかし、好きこそものの上手なれで、知識もだが体験的に会得したことは多々ある。そうしたことが、ちゃんとこの本の中で紹介されているのだ。それも、デジカメを手にして少しばかり撮り慣れた若い女性が共感できるような内容と書き方による紹介である。実にイイ感じなのだ。
 そう。ファッション雑誌の写真を眺めている気持ちになってくるのである。だから、まるでこの本全体が、一冊の気持ちいい雑誌のように受け取ることができる。解説の文章は下手に長くなく、短く簡潔であるため、活字が苦手な人も無理なく読み進めていくことができるだろう。その辺り、技術や理論というよりも、感覚で読者を捉えるようなものであるかもしれない。
 だから、この本を全部見て、改めて手に取って思うのは、「うまい」という一言である。実にうまくできているのだ。その割には表紙が地味で、センスの分かる人は手にとってくれるだろうが、さて、売れ行きのほうはどうなるのか、要らぬ心配までしてしまう。背中の本のタイトルは手書きが活かされず活字なので、書店で棚に並んでいるときには、損をするかもしれない。
 撮った写真から雑貨や文具までこしらえるという、私もやってしまいたい、あるいはやったことのある遊びも掲載されている。いや、ホント、いいセンスの一冊である。内容も確かだ。これで千円は安い。お買い得でためになる、写真好きにはお勧めの本である。




Takapan
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