本

『講座、イベントの作り方』

ホンとの本

『講座、イベントの作り方』
牟田静香
講談社+α新書
\840
2007.4

 デザインとかマーケティングとかいう分野のものには、関心がある。だが、それは専門のデザイナーやプランナーなどの解説が必要であるという気がしていた。思いこみでもあった。
 素人に近いような、しかし幾らかの経験をもち、試行錯誤を繰り返しているような人が、そのような本を上梓できるということは、あまり考えていなかった。だから、やられた、という気がした。
 しかし、美しいデザインを作るのが目的ではなく、人を集めるのが目的となると、たしかにそのような人のほうが、説得力もあるし、本物であるように思える。作った側が美しいと感じ、見た人がステキだと感じても、客が集まらないチラシは、ある意味で失格なのである。
 著者は、公務に携わっている。大田区の広報である。民間のような切迫さもない中で、人が集まらなくても人のせいにするなどできるようなお役所に加わったとき、そうではない、という正直な意見をぶつけ、道を拓いてきた。その経験が、ひとつの自信になっている。
 見本として挙げられたチラシが多々あるが、それほど美しいとは感じられないものが多い。ワードでこしらえた、素人臭いものである。だが、それは人の心を捉えた。定員をオーバーする人気を博したのであるから、なかなかのものである。それは爆発的な人を呼んだのではないが、よい反応をもち、会場に溢れんばかりの人が申し込んできたのだ。
 教会に人を呼ぶというのも、このくらいの視点が相応しいような気がする。バカ売れをした商品の成功例を出しても、それは時の運みたいなものもあるわけで、チラシそのもので左右されたわけではない。純粋に、チラシや広報がどうだったから成功したのか失敗したのか、というのは、こういう数十人単位の人を集めることができたかどうかの実績がものをいうに違いないのだ。
 このようなノウハウ本を出すときの鉄則にも従っている。ノウハウを出し惜しみしないことだ。著者は、ここまで企業秘密を暴露してよいのか、というほどに、経験してきたことを明らかにしている。だが、だからこそ、この著者は信頼されて、各地に講演など招かれているのだろう。
 ということは、私たちもこうした本を利用しない手はない。教会の集会を、依然として「伝道集会」「疲れた者は来なさい」「クリスマスは教会へ」と題して人を呼ぼうとしている教会は、あまりにも人心を顧みていないということが、この本によってさえ、明らかになるであろう。
 繰り返すが、ここにはプロのデザイナー的な魅力はないかもしれないが、素人にでも手が届く、実践のためのちょっとした工夫、しかし大いに結果をかえてしまい工夫が、ふんだんに盛り込まれている。読まないと、損である。




Takapan
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