『紅葉ハンドブック』
林将之
文一総合出版
\1260
2008.9
秋の紅葉。一言で言うが、日本列島だけでも、10月から11月最終に至るまで、紅葉にさしかかる時期も段差がある。
ハンドブックというだけあって、手帳サイズの携帯可能な本である。しかも、薄い。この小ささと薄さでこの値段、と通常なら驚くものである。しかし、中を開いて、さらに驚くであろう。その写真が実に細かく、美しいことに。
眩しいばかりの、紅葉の写真。それは、芸術的な作品というよりも、どの葉がどの木のものであるかを判別することができるように、専ら科学的な観点から集められている。また、その特徴が書き込まれている。
よく、子どもが落ち葉を集めてくる。無邪気に、「これはなんのはっぱ?」と訊くかもしれない。だが、青い葉でも分からないのに、紅葉となるとどれも同じであるように見えて仕方がないのが実情だ。イチョウは特別だとしても、はっきりとモミジだと分かるほかは、私などはせいぜい見慣れたサクラくらいのものだ。
しかし、この本があれば、今日からもう怖くはない。「待て待て」と観察すれば、何の木の葉であるか、きっと分かるであろう。
そもそも最初に、紅葉のシステムも簡単に説明してある。これくらいの知識があれば、ちょっと蘊蓄を披露できるかもしれない。それぞれの植物については、最低限でもう十分であるだけの解説が施されている。落葉そのものは、スキャナーにかけたということだ。だから余計な光線が入らず美しい輝きで観察できるようになっている。この方法は、著者が独自に開発したもののようだ。なるほどと思う。
なお、バイオマス発電により印刷が施されているなど、木を愛して全国を歩いて葉を集めている著者のポリシーが、本の随所に現れている。
そんな意味からしても、安心して見て楽しめる本である。