本

『こうして、人は老いていく』

ホンとの本

『こうして、人は老いていく』
上村理絵
アスコム
\1400+
2024.3.

 発行2か月後に第6刷が発行されていて、それを手に取った。読まれているのだ。
 字が大きい。行間もゆったりしている。大切なところはゴシック体になっていて、さらにポイントが大きくなっている。ご丁寧に傍線まで引いてある。内実について知識のある人は、そこだけを拾い読みしても、重要点を把握することができる。むしろ、そこだけ読み進めればよい、とさえ思う。
 図版があまりない。但し、体操のようなものについては、イラストが数頁にわたり載せてあるので、見て分かるようになっている。
 著者は理学療法士。現場で、多くの人の悩みを聞き、対処してきたことだろう。  だから、本書を貫いているひとつのテーマは、「リハビリ」である。もちろん、専門家の指導に越したものはない。だから、本書で全てを賄うことができる、と思い込むのは本当はよろしくないだろう。それは、医学的な本のどれにも言えることである。しかし、それでもこの手の本の出版は止まない。需要がある、ということである。不安に思う人が多い、ということである。
 しかし、本では治療はできない。できることは、多少の予防である。また、俗説や誤解などを信じ込むことを避けることである。本書は、リハビリテーションを成し遂げるものではなく、自身で自分の状態を知る、ひとつの「セルフリハ」と著者が呼ぶものを、いくらかでも味わってみることを主眼としているのであろうと思われる。
 中心に置く言葉は「老化」である。そこに「精神的老化」が占める割合は小さくない。だが、「肉体的老化」とそれは相俟って進行するということも押さえておく。となると、認知症への眼差しもそこに必要だ、ということになるだろう。尤も、認知症は本人が自覚できないところに困難があるわけで、本書は周囲の人にとっても参考になると言えるだろう。
 老化防止のためには、筋肉が問題なのではない、などと、当然のことではあるが、私たちに知識と希望をもたらす言葉を投げかける。本書は全体的にそういう傾向がある。悲観する必要はない。その悲観する心そのものが、精神を老いさせる。筋肉にしても、つけるというのは難しいが、体を動かすということは大切である。できれば寝たきりでいたくはないものだ。
 こうしてよくよく見ていくと、極めて当たり前のことばかりが書いてあるようにも思える。食べよ、動け。心健やかに。しかし、現場を見てきた療法士の眼差しは、現場でのアドバイスをふんだんにここに含んでいるはずだから、説得力もあるし、その一言に重みがある。多くの人の苦労話や困難な事例を、その言葉が背負っているからだ。
 こうしたことだけが書かれているのであれば、それは「ありがち」な健康本で終わったかもしれない。本書には、それだけではない強いメリットがある。それは、「介護」についての実際的な手続きやその実態である。つまり、ホームヘルパーの訪問やデイサービスへの通所などのサービスが、「要介護状態」などでなくても、受けられる制度かある、などと紹介するのだ。「事業対象者認定」だ、と著者は掲げる。詳細は本書をご覧戴くべきであるし、自治体によっても違いがあるというが、これは国が定めた制度であり、あまり知られていない可能性がある、というわけだ。
 決して、リハビリの大切さを伝えようとしたのではなく、自宅でできる方法と心得を紹介した、と著者は最後に告げているが、私には、その大切さというものがよく伝わってきたように感じられた。まさに「心得」がそうなのである。つまり、私たちは、方法や指導を本からすべて得るのは難しいと思うが、恐らく「知識」の提供により、適切な「意識」を与えられることはあり得ると思うのだ。
 高齢者の笑顔が増える世の中になりますように、という願いで本書は結ばれる。そして、最後まで読んでいただいたことへの感謝の言葉が、巻末に繰り返される。その心を汲み取りたい。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります