本

『今野つね ゆうひの丘のなかま・3』

ホンとの本

『今野つね ゆうひの丘のなかま・3』
いわむらかずお
理論社
\1260
2004.2

 いわむらかずおさんの、新しい童話シリーズ。
 今回は、キツネが主役。キツネが交通事故に遭った。これを、ゆうひの丘のなかまたちは、なんとか助けようとする。しかし……。
 どうにも、説明をしようとすると、本の面白みをなくすような無粋なことをしてしまいそうになる。それでも幾らかは明らかにしようとするならば、この怪我をしたのがキツネであるというのが、他の動物たちにとって、脅威の存在であるということに気をつけておくとよいだろう。彼らは、敵を愛する行為をしているのだ。
 傷を負ったキツネのために、その夫を捜そうと皆で努力する。様々な情報網を使って皆で手分けする。と、キツネのところに残ったのがあかねずみのあかねさん。はて、ねずみを食べて暮らしているキツネのそばに自分一人だけが残ってしまった。これは、いつ襲われても仕方がない状況だ。だが、自分は助けるためにここにいる。そのジレンマに悩み、またキツネのほうもそれに気づいて、食べないよと気を遣うのである。
 互いに食べ合わなければならない自然の掟。その中にも、助け合うという観点をもちこんだこの童話は、子どもたちでなく、大人にこそ読まれなければならないものではないだろうか。
 最後に、つねさんの夫が戻ってくる。そのとき、ニワトリが捕らえられている。そのために、家族は、助けた仲間たちを狙うことなく、そのニワトリで腹を膨らませることができるようになる。
 このニワトリというのは、何だろうか。平和をもたらしたこのニワトリというのは、私たちの世界の平和を求めるための、いったい何なのであろうか。




Takapan
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