本

『公務員のためのSNS活用の教科書』

ホンとの本

『公務員のためのSNS活用の教科書』
佐久間智之
学陽書房
\2300+
2022.2.

 自治体が、SNSを活用するのは、もう当たり前になっている。だが、ウェブサイトとは違い、SNSは、プロに作ってもらうべきものではない。現場を知る者が、現場を伝える、あるいは呼びかけるものだ。それは、普通のウェブサイトよりも直接一人ひとりにコンタクトがとれる。ただ大きな屋敷を構えて、いつか来てくださいという調子のサイトでは、訴える力がないのである。その屋敷があったとしても、SNSという出前によって、そこに案内する形にしなければ誰も訪れはしない、というのが現状であるのだ。
 では、どうすればよいか。少しばかり経験のある公務員がその才能を活かして、中のひとになればそれでよいのか。だが、公務という点には、厳しい目が向けられることになる。法令違反をするわけにはゆかない。著作権問題も、法的なものとして認識しておかなければならない。また、公共の書類を全部そこに載せるわけにはゆかないから、どのように告知するかについても、一般生活でツイートしているのとは違うことになる。さらに、公務となると、そのツイートひとつに、税金がかかっているという捉え方をされることになる。問題になりやすいとなると、責任を伴うこととなり、厄介なものである。
 だから、公務員のための、と限定されたこのような案内が、確かに必要だった。  炎上といった、否定的な問題に対する懸念ももちろん必要なのだが、こうすれば人々が好感をもって寄ってくる、という、たとえば心理学的に、漢字の比率がどのくらいがよいのか、といったことまで、本書は教えようとする。
 一般的なテクニックを披露した後、具体的に、一つひとつのSNSにおける活用法もレクチャーされる。親切である。
 Twitter、Instragram、LINE、Facebook、そしてTikTokまで、それぞれ独特の方法をも知らせてくれる。私も恥ずかしながら、InstagramがPCからアップできるようになっていたことに、気づいていなかったので、個人的に早速ありがたく利用させてもらった。
 ただ単にテクニックを披露するばかりではない。そのSNSを利用する年齢層やターゲットなど、ひじょうに具体的に、実情を伝えているのは、実際現場では助かるのではないだろうか。若者にキリスト教を伝えようとして、熱心にFacebookだけで発信している教会があるが、それは完全に方法を間違っている。以前そうした方に教えて差し上げたが、信じようとはせず、相変わらずFacebookしかやっていない。こうなると、悲劇だか喜劇だか分からなくなる。本書も、もしかするとそうした勘違いをしている自治体があるとなると、そこから救ってくれることになるかもしれない。
 私も、Instagramは、テクニックらしいものを殆ど使っていない。あまり懲りたくはないという心情があるのだが、改めて学ぶような思いで目を通すこととなった。  写真撮影の、プロ級のテクニックに見えるような、基本的だが大切な方法も見せてくれる。素人相手でここまで言ってくれてよいのか、と心配するほどではあるが、それでこその、公務員のための教科書だと言えるだろう。私は偶々フィルム時代からの一眼レフも経験しているので、撮影の基本は身につけているつもりだが、多くの人は、背景に何が映り込んでいるかすら気にしないかもしれないし、三分割の基本も意識の中にはないかもしれない。
 とにかくそのように、知識としてもなかなか役立つものであるし、なによりその説明が具体的で見やすい。カラーをふんだんに用いて、大切な点がパッと目に入るように、まさにこの本そのものが、優秀なSNSを演じているわけである。
 少しばかり高価に感じられるかもしれないが、これはお買い得である。これで学んで改善したSNSが実際に出たら、大きな影響を覚えることになるのではないかと期待するところである。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります