本

『世界と地球の困った現実』

ホンとの本

『世界と地球の困った現実』
日本国際飢餓対策機構・編
明石書店
\1,200
2003.10

 機関誌『飢餓対策ニュース』に隔月で掲載されていた「子どもニュース」が編集されて、一冊の本になった。各方面から、その内容を利用したいという申し出が重ねられてきたからである。
 緊急活動・自立開発援助・啓発・教育・世界里親会・海外駐在員派遣などの活動を続けている、日本国際飢餓対策機構。まだ二十数年の歴史しかないNGO団体であるが、キリスト教系の団体であるがゆえに、日本ではそれほど注目を集めることはなかった。だが、個人的にも、京都の教会員がこの一員としてアフリカに赴き、その様子をスライドで解説するという集会を教会でしてくださったこともあり、ほんのわずかな形ではあるが、関わりをもってきた。今また、この本に出会い、関わりを強くしなければならないと思った。
 分かりやすい。実に、分かりやすい。
 四コマが数本並ぶ形で一つのストーリーが作られている。その中で、明確な数字を挙げながら、飢餓とは何か、何が飢餓を生んでいるか、その飢餓と自分とがどう関わっているか、が明らかにされていく。
 まず、腹が出て手足の細い子どもは、飢餓人口の1割程度でしかないことが説明される。食べ物が十分でない生活を強いられている人が飢餓であるならば、もっともっと多いのだ。そのために毎年、東京都ひとつ以上が消滅するような死が世界中に満ちているのである。
 それは、飢饉や干魃によってなされる、という錯覚が私たちにはある。だが、半世紀前なら、飢饉や干魃ではそれほどの人がなくなることはなかったという。新しい経済制度が、貧困を生み、たとえ食糧がそこにあっても、食べられない人々を爆発的に増やすことになったのである。
 さらにそれは、先進国が経済援助をしようとして、もちこんだ制度に基づく場合もある。効率の良い生産方式は、それまでの農業をくずす形で入り込んだ。そのことで、たとえば地主は儲かったが、土地を失った農民は飢餓へ追い込まれてゆく。
 産まれる子どもの数が多いから飢餓が起こると考える人がいる。事態を外から見るとそういう印象をもつ。それが如何に間違っているか、いや、思い上がっているかは、本書を読めばはっきりと分かる。
 また、教育を高めることが飢餓からの脱出になるということを理解しない人がいる。飢餓をなくすためには、金を出せばそれでよいというのである。地道な教育が如何に重要であるかも、本書を読めば分かる。
 最後に、「美しい村」という寓話が載せられている。これが、私たちに、しみじみと、どうすべきなのかを示してくれる。
 小学生のためのマンガと説明に過ぎない。しかし、多くのおとなはこれを少しも分かっていない。
 私は、泣いてしまった。それは、辛い飢餓を味わわされている人々のためでもあるし、それを味わわせている私自身の至らなさを思ってのことかもしれない。




Takapan
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