本

『どうすれば、こぐまにダウンジャケットを売れるの?』

ホンとの本

『どうすれば、こぐまにダウンジャケットを売れるの?』
酒井浩司
Nanaブックス社
\1260
2006.10

 マーケティング戦略の実例を楽しく語る本である。マンガ仕立てで、キャラも動物とし、人間味を隠したところで展開していくので、却って事柄が明確に際だつようになる。うまい手法かもしれない。
 その面白い内容をここで明らかにしてしまうのは、よろしくないと思う。一定のストーリーが展開され、その場合、どんなことに気づいて、どんなふうに売り込みを進めていけばよいのか、適度な解説を伴いつつ、読者を運んでいってくれる。
 可能なかぎり、専門的なカタカナ用語や、一般に知られていない企業名などを避けつつ、事の原理を伝えようとしてあり、十分楽しめる内容となっている。
 マンガとして動物社員たちが話し合っている様子が場面の中心となるのであるが、それはいわゆるブレーンストーミングのあり方に近いようなのだが、雑談のようにもなりかねない、そんな場での話し合いが、一定の方向性を決めていく。多くの時間を割くことの許される環境なら、それはそれでよいのだろう。しかし、予め考えてきてもらう素地を忘れてはならないだろう。とにかくその場で何か考えればいい、というような、甘いものではないからだ。
 この本で伝えられているアドバイスは、要は、変化に対応していけ、ということなのだろうが、逆に言えば、その提言自体も、変化を受ける可能性があり、奇妙なパラドックスの中に私たちは陥りそうな気もする。
 そもそも、「どうすればこぐまに……」などという、最高度に具体的なタイトルをとること自体、ビジネス書の中での一定のトレンドであるといえ、私は、「どうすれば数あるビジネス本の中でこの本を売ることができるの?」という思惑が働いているように見えてならないのだが……。




Takapan
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