本

『公園づくりガイドブック』

ホンとの本

『公園づくりガイドブック』
神保賢一路
文一総合出版
\1890
2008.2

 タイトルには「生き物と共存する」という言葉が冠されている。これが大きな視点だろう。
 著者は、都市の中に公園が必要であることを説く。しかし、それが人間社会にとっては、不都合な側面もあることを指摘する。火災の虞がある。犯罪を助長することになりはしないか。
 自然を愛する人の視点は、つねに様々な立場の人の視点も弁えているのだ。このちょっとした配慮が、実は大きい。そして、生き物たちを慈しんでいることがはっきりと伝わってくる。選挙の票欲しさに、あるいは自社の儲けのために、公園を作りましょう、と口にするのとは、わけが違うのだ。
 さて、公園をつくるとは言っても、公園の具体的な作り方を示したというふうではない。いわば、様々な動植物の生態を、写真と解説で説明するばかりである。しかし、その雑木林がどんな動物にとってどんな役割を果たすという理由で必要なのか、筍を掘った後はどうすればよいか、竹を切るときにはどこから切ると、他の生物にとってよいことがあるのか、そんなレベルの、自然とのふれあいが随所にあふれている。また、外来生物のどのようなものに気をつけなければならないか、などにも触れてある。
 見れば見るほど、自然の側に寄り添っていこうとする著者の心が伝わってくる。このような運動を、もう30年もしているとのことだ。著者はこれを、自然を愛しむ(いとしむ)と表現している。
 本の終わりのほうでは、どの植物をどの時期に刈るとよいのか、など、具体的に長年取り組んだ人でないと分からない情報を、余すところなく示している。
 金の動きや政治的取引のためだけに自然保護を口にするような人とは違う。このような貴重な情報は、おとなももちろんのことだが、子どもたちにももっと伝えなければならない。その意味で、この本の意義の大きさが、素人の私にも、十分想像できた。




Takapan
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