本

『イラスト版 子どもの権利』

ホンとの本

『イラスト版 子どもの権利』
喜多明人・浜田進士・山本克彦・安部芳絵
合同出版
\1680
2006.2

 教育法、社会福祉などに関する教授が工夫してつくりあげた、子どもにも分かりやすい良書である。
 図書館で見て、ついに私は購入した。これは手元にずっと置いておきたいと思ったからである。
 子どもを相手にすることが多い私である。たしかに、そこには大人とか子どもとかいう以前に、一対一の人間としての向き合いというものがある。相手が大人であれ子どもであれ、人間として共にいることに変わりはない。と同時に、自分は大人として、その子どもの前で、強い立場にある者として接していることを、忘れてはならない。そこには自ずから、たんなる平等や公平といった原理は成立しないのである。
 このような教育には、小手先のテクニックなどは無用である。だが、何を重んじなければならないかという点について、押さえておくポイントというものがあるだろう。
 だから、この本に、「こうすれば問題は解決する」というようなハウツーを期待するとしたら、失望する。ここにあるのは、どういう視点に気を払いながら、問題に向かっていかなければならないか、というアドバイスである。何の問題解決も与えてはくれない。そして、だからこそ、尊いのである。
 精神世界だとか怪しい宗教だとかいうものは、こういう問題に、「こうすれば解決!」と一刀両断の裁断を下す。そこに権威めいたものを感じると、人は自分での判断を捨てて相手の意のままに従うことで気を楽にする。だが、もちろんそれは罠である。そうして、金銭や魂を、捧げてしまうのである。
 私たちは、考えなければならない。自由の目眩を覚えつつも、自ら考えていかなければならない。ただし、そのときに、無限の深淵を足もとに感じて怯えるのではなく、この石を渡れば向こう岸へ着けるというふうな、あるいはこの石に乗れば滑り落ちる危険が高いというふうなポイントを教えてさえもらえたら、助かる。この本は、いわばそのような役割を果たしている。深めれば、実に高度なレベルで、「権利学習」を導いてくれる。
 親として、教育者として、それから教会学校の担当者として、これほど私にとってありがたい本はない、という思いがしている。




Takapan
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