本

『子どもたちの8月15日』

ホンとの本

『子どもたちの8月15日』
岩波新書編集部編
岩波新書956
\735
2005.7

 皇后を含め、様々な人の終戦の記憶を集めたもの。
 読み応えがある。歴史的事件については、その後振り返って述べるとき、どうしても思い入れがリードする。その後の自分の立場に立って過去を眺め、意見を言うという具合である。そこで、その日のことを淡々と綴ってもらうという姿勢が、簡単そうでなかなかできないとれないものなのである。国語でも読解の基本なのだが、事実と意見との区別という問題である。
 この本は、できるかぎりその事実に的を絞ってある。今の立場からの感想や意見を縮小し、そのときの姿を忠実に伝えることを旨としている。だからまた、声高に思想を語るより、真実性を帯びて伝わってくる。
 俳優の児玉清さん。「日本は危ないぞ。負けるかもしれない」と言っていた先生の思い出が綴られている。子どもの目から見ても非国民、女々しいとされた田辺先生。その先生が、終戦を迎えて、自分たちはどうなるのだと訊いた子どもに向かって、「これからは、君たちは自分たちの夢を追うことのできる時代が来るよ」と答えたという。
 こんな人になりたい、とつい思ってしまう。
 いわゆる玉音放送を聞いたときの思い出も多く語られるが、そのとき冷静だった記憶を幾人もがもっている。子どもであるがゆえに、という意見もあろうが、子どもは概して一本気であるがゆえ大人のほうが狡く逃げ道を作っていたという説も強い。皆が一切が終焉したと受け止めた、と断言する西尾幹二氏の例を挙げ、教科書問題の最前に立つ人の立場がよくそこに現れていると評する見方もある。
 こうした記憶を、私たちは受け継がなければならない。戦争は何をもたらしいか。そして、戦争は誰がもたらしたのか。問い続け、それをくり返さない知恵を得なければならない。重い本だが、皆で受け止めたい本でもあった。




Takapan
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