本

『二百年の子供』

ホンとの本

『二百年の子供』
大江健三郎
中央公論新社
\1,400
2003.11

 ノーベル文学賞受賞者にして、また最近まで最年少の芥川賞受賞者の一人として、日本の小説をリードしてきた著者による、唯一のファンタジー小説がここに完成した。
 一時は筆を折り、小説の世界から遠ざかってさえいた著者が、新聞小説という形で、連載する中に、子どもたちの世界を――そしておそらく自分の子どもたちを描くかのようにして――提示しようとした。
 もとより、難解とも言われる著者の文章である、ハリーポッターのような通俗性はなく、読んで誰もが入っていけるというものでもない。著者の他の小説で取り上げられているようなモチーフや風景が取り入れられることで、ファンにはたまらないのかもしれないが、門外漢が一瞥するにはあまりにハードルが高く、多い。さまざまな象徴やトリックスター的要素がふんだんに盛り込まれ、高度な文学性をもった世界が築かれているには違いないのだけれど、私のような素人にはその面白みを堪能することができなかった。自分の才能のなさを悲しむ次第である。




Takapan
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