本

『こぶたのポインセチア』

ホンとの本

『こぶたのポインセチア』
フェリシア・ボンド作・絵
池本佐恵子訳
岩崎書店
\945
2000.5.

 魅力的な絵に誘われて借りた、やや小さな絵本。いや、お話の本に絵が載せられた、と言ったほうがよいだろうか。
 お話の作者がイラストも手がけている。画家でもあるのだそうだ。なにげない絵のようだが、なかなか計算されたつくりになっているように感じた。ひとつひとつの絵が、場面を描くとともに、ポインセチアの気持ちを実によく表現しているように見えるからだ。これは、作者ならではの呼吸ではないかとも感じる。
 こぶたのポインセチアは、兄弟の多い、賑やかな家族のひとりである。本を読むのが好きなのだが、図書館から借りてきた、おなじみの本を、さあゆっくり読むぞと家の中のお気に入りの場所を探すと、兄弟たちが座を占めていて、そこで読書をすることができません。行くところ行くところ、誰かがいて、ポインセチアは本を読むことができないのです。ポインセチアは、家族が多すぎると思いました。兄弟たちにあたってみても、問題は解決しません。ところが次の日、お父さんが、広い家に引越をしよう、と言いました。家が狭いからね、と。ポインセチアは心で叫びます。家が狭いんじゃない、家族が多すぎるんだ、と。
 ストーリーを全部語ることはできない。このあとどうなるかは、見てのお楽しみだ。子ども心をくすぐるような、同じ目の高さで、家族というものを見つめていくことになるだろう。
 こんなふうに大家族というのが見られなくなった時代、ちっともリアリティがないではないか、と思う方もいらっしゃるかもしれない。だが、私はそうは思わない。家族というものが、教室の友だちのことであるように置き換えてもいいし、場合によってはいっそのこと、世の中の人々として理解してもいい。兄弟がいたほうがいいじゃないか、と呟く一人っ子のような気持ちの範囲でいる必要はないのだ。
 できるなら狭い中で閉じこもっているほうが、自分を守ることができる。人を傷つけることもなく、人から傷つけられることもない。それもまた、ひとつの考え方ではある。しかし、それだけを貫くことで、人ははたして生きていけるのだろうか。要するに、いろいろあっていいのではないだろうか。
 可愛いポインセチアの素直な考えに、しばし同調してみては如何だろう。そして何よりも、教訓めいたものを期待するよりは、まずは楽しく、同じ目の高さでわくわくどきどきしてみたらよいと思う。だから、こういう本には、よけいな評のようなものはいらない。ただ、楽しめばよい。
 そういうわけで、可愛い本であった、とお伝えしておくことにしよう。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります