本

『高校数学とっておき勉強法』

ホンとの本

『高校数学とっておき勉強法』
鍵本聡
講談社プルーバックスB-1243
\903
1999.2

 私は、小学校の算数と、中学校の数学とを教えている。だから、高校数学は解けない。数学の専門ではないので、自分では高校数学を解くのを楽しみだとも考えていない。ただ、それを生徒が学ぶということについては、大いに学んでほしいと願っている。数学は人生で役に立つ、という点について、確信が揺らぐことはない。
 ブルーバックスには、何種類か、高校生の学習に役立つものがある。最近は、中学生の理科の教科書を提案もしている。私は中学生のころ、このブルーバックスに一時はまった。ちょっと背伸びをするような読み方というのが、以前はあった。今の学生たちにも、背伸びしてもらいたい。衒うことばかり覚えても仕方がないが、それくらい、知的に大人の世界へ首を突っ込んでほしいのだ。そのために、映画の世界に浸るというのも昔はあったのだが、最近は大人のほうが、子どもの気に入るような映画ばかり制作するようになったから、子どもの側からすると背伸びにはならないのだ。
 話が外れてしまった。この本のサブタイトルは「学校では教えてくれないコツとポイント」とある。著者は高校教諭から予備校講師を経験している。高校生と、別の立場で向かい合って数学を押している。数学者というのではなく、数学を通して何か教えたいことがあるというのが、よく伝わってくる。その意味で、私と似ているのだ。
 だから、この本は最後には、美しい答案を書く方法を教授することで終わる。それが人生に役立つということを、滔々と論ずる。最初には、「高校数学とはなんだろう」という問いかけから始まっている。受験産業から見た、問題を解くということ、得点を取るということについて、あっさりした、そして確実な視点をもっている。それで、要するに何がどうできれば受験の数学は成功するのか、勉強法は具体的にこのことを実行すればよいのか、定期試験と大学入試と具体的にどう違い、勉強法がどう変わってくるのか、実際どうやって解く訓練をすればよいのか、そんなことを、本当に分かりやすく説明してくれる。それがこの本である。ある程度もがいてきた生徒は、「なんだ、そうなんだ」とわくわくしてくることだろう。そう、もがくことは大切なのだ。もがかないと、何が苦しいのか、分からないからである。
 味わいのある、指南書である。数学の高度な天才的逸材の学生には不要かもしれないが、数学をなんとかしたい人、そして数学には何かがあると予感している人、そんな人は、開いてみるといい。私はこの本は購入した。そして、最初の頁から最後の頁まで、黄色いマーカーで線を引きまくった。著者も、数学の問題集と共にこの著書を携帯してほしい、と願っている。勉強法で悩んだら、すぐに開いて確かめるとよいと自信をもっているからだ。しかし、そこに傲慢さは見られない。
 一連の解説が流れていく中に、読みながら身を任せるような感じがしていた。まるでシンフォニーを聴くみたいに、退屈することなく最後まで導かれていった。見ると、著者の趣味は音楽ではないか。数学と音楽とには強い関連があると言う人がいるが、その点にもなんだか妙にうなずいてしまうのであった。




Takapan
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