本

『由来がわかる 木の名前』

ホンとの本

『由来がわかる 木の名前』
岡部誠
日東書院
\1,300
2003.8

 我が家には、ハンディ版の図鑑がちょこちょこある。高価なものではないが、ちょっと調べるときに便利なのと、なにぶん図鑑というものは、ただ見ていて楽しいものだという認識が私にはある。小さいときから、図鑑は好きだった。当時はイラストのみの、海の図鑑とかいうものなどでも、何度も何度もそれを見ては、年に数度しか行けない海の、あの潮の香りを想像していた。おかげでウミウシはいまだに憧れである。
 最近購入したのは、カエルの図鑑くらいなのだが、図書館で借りるときにも、新刊の図鑑はつい手が出る。ふつう、図鑑は館内閲覧のみなのだが、新刊ものについては貸し出してくれるのだ。
 この本は、ただ木の名前が記してあるだけではない。特徴的なことは、すべての木について、名前の由来が掲載されていることである。
 たとえば、カエデ。「カエルデ(蛙手)の略。掌状に裂ける葉をカエルの手になぞらえたもの。属名acerは強いの意味で、材質の堅いことによります。……」とある。クリスマスに飾られるポインセチアは、「1825年に、最初にアメリカに導入したJ.R.ポインセットの名にちなみます。別名は猩々木で、苞葉が赤く色づくことによります。……」と解説してある。
 また、サクラについては、「古事記にあるサクヤ(咲耶)の転。サキムラガル(咲簇)の略、麗らかに咲き誇る様子からサキウラ(咲麗)の略など、諸説があります。属名はスモモのラテン古名に由来。」と記してある。
 興味は尽きない。日本名についても、外来名についても、一定の知識を与えてくれる。イチジクのところに、俗説の「一熟」のことが記されていないのは、そこまで書くスペースがなかったからかもしれないが、それだけにより重要な根拠ある説を重んじているといえるのではないか。
 小型ながら写真も美しく鮮明で、木の花や実の写真が多く採用されている。実際に出て行って調べるときにも役立つだろうし、ただ見ているだけでもいい。案外、植物の名前というものを、私たちは知らないでいる。名づけたのは人間だが、それぞれが神の創造物。一つ一つの楽しさに出会えたら素敵だなと思う。




Takapan
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