本

『近現代史ものしり用語物語』

ホンとの本

『近現代史ものしり用語物語』
北村恒信
光人社
\1785
2005.4

 まず主義主張があって、あるいは感情があって、そのために戦前戦中のことを持ち出す、という論争がしばしば見られる。たいていは、議論にならない。それが見ていても辛い気持ちがする。
 戦争のときのことを、私たちも知りたいと思う。そのとき、まず主張ありきでは、何をどう判断してよいのか、却って私たちは分からない。
 この本は、可能な限り客観的に、その時代の「言葉」について説明を施している。それも、たんに言葉のうわべの意味などではなく、その言葉を取り巻く歴史、事件そして背景を総合的に、何頁か使って説き明かす。
 私たちは、こんな本を待っていたのかもしれない。
 参謀、コンクリート船、国体明徴、教育勅語、総督府、不敬罪、伝単、断髪令、愛国百人一首、日本文学報国会、大東亜省、二キ三スケ、五族協和など、ところどころ拾っただけでも、刺激的な言葉が並んでいる。いったい、戦争の背景に、どんなことを人は考え、どんな生活を営んでいたのか。
 そこで思ったことがある。「言葉」は、思考概念のことだ。もし、これらの言葉を忘れ去っていたとしたら、私たちは、歴史の苦い点に気づくことなく、また同じ轍を踏むようなことに容易になってしまうのではないか。
 この本は、貴重な資料として、活用していくこと必要のある本である。




Takapan
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