本

『お父さんのための携帯電話ABC』

ホンとの本

『お父さんのための携帯電話ABC』
法林岳之
NHK出版生活人新書219
\777
2007.4

 さてさて、携帯電話をもたない私は、こうした本で恥ずかしながら携帯電話について学ぶこととなった。
 何も、操作方法を教えてくれというのではない。そんなものは、なんとでもなる。問題は、携帯電話のもつ意味や危険性、将来性などについてだ。あるいは、歴史も含むといってよい。
 中学生や小学生までが、「みんなもっているから」という理由のもとに、親から携帯を与えられている現状が、信じられないでいる。まるで、子どもたちが陰謀を企てて、「みんなが……」と大合唱して、まんまと成功しているのではないか、と思うことがあるほどである。
 というのは、子どもが扱うには、たいそう危険が伴うと感じているからである。料金面にしてもそうだし、犯罪との関係、迷惑メールの処置などが頭にちらつくのである。大学生だったか、定額だと思ってばんばんある使い方をしていたら、百万単位の請求がきたなどというニュースがあったような気がする。
 何を、どう知って使わなければならないのだろうか。便利さが宣伝され、魅力ある機能で釣られていくうちに、その商売戦術にうまく乗せられてしまい、人々はまるで考える力を吸い取られたかのようにさえ見える。歩きながらケータイ。踏切にそのまま入り死んだ人もいた。それに近い危険な様子は、毎日のように見かける。
 ゲゲゲの鬼太郎がリメイクされているが、ケータイ妖怪が、魂を吸い取っているように思えてならないのだが、杞憂なのだろうか。
 この本の紹介を忘れていた。NHK趣味悠々で携帯電話の講座を担当している人である。が、この本について言えば、容赦のない叙述である。あたかも携帯電話に関する基礎データや基本的批評をこの本一冊で全部やってしまおうという意気込みすら感じる。
 機種や機能については、年々変わっていくのだろうが、その意味や方向性については、来年読んでも役立つものがあるだろうと思われる。つながる仕組みから、契約の背景、基本サービスからインターネットのこと、今後の展望など、必要な事項がぎっしり並べてある。ときに開発秘話のようなものもあり、楽しめる。いや、この社会の動きを占うような本となっていることを、喜ばしく思う。




Takapan
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