本

『けさの鳥』

ホンとの本

『けさの鳥』
山岸哲
朝日新聞社
\2100
2004.10

 朝日新聞に、2003年より一年間連載されていた、鳥の紹介コーナー。朝刊だから、「けさの鳥」という。この本の題だけからは、何のことだろうと訝しく思えていたが、訳を知ると安心した。
 数人の写真家の、美しい写真で、鳥のことが語られていく。新聞のスペースの制限から、解説は130文字しかない。だが、それだけの言葉で、いかに鳥のエッセンスが伝えられていくことかと驚くものがある。
 それでも本としてまとめるにあたり、巻末に、一覧や補遺を盛り込み、鳥についてのデータが比較できるように配慮してある。かなり専門的な話も展開されるが、素人の私にも、十分楽しめた。
 何より、一枚一枚の写真の愛らしいこと。そして、それが可愛ければ可愛いほど、激減している種への慈しみと、そこまで追いやった人間への怒りと、自分もまたその人間のはしくれであることへの哀しみとが、重なっていることに気づかされる。
 ついに最後の「ミヤコショウビン」は、絶滅した鳥として、イラストしか掲載されなくなる。私たちがどうしなければならないか、は見えてこないが、どうしてはならないか、ははっきり自覚されるようになっている。
 これで2000円は、安い買い物かもしれいない。




Takapan
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