本

『経済が楽しくなる本』

ホンとの本

『経済が楽しくなる本』
日経STOCKリーグ編
日本経済新聞社
\1260
2002.9

 日に日に状況が変わる経済の本としては、少々古い部類に属する。当時の経済と今とではまた違う、ということもあるから、この本が経済最先端の現場にいるお父さんたちに役立つとは思えない。
 そう、これは教育の本なのである。中高生や大学生に経済の仕組みを教えるための日経のはたらきの一環をなすのだそうである。その仕組みについては、またそれぞれの方が日経についてお調べください。
 経済については、高校に政治経済という教科があるなどするわけだが、どうもテストのためという意識も強く、第一受験に必要ないとしてまともに勉強しない生徒もいるわけだから、やはり社会に出たときに、経済について自分は何も分かっていないぞ、と戦慄を覚える人は、少なくないらしい。この私もそうなのであるから。
 それで、経済について一からやり直す本、というのは経済関係の本における一つの定番となっていて、あらゆる工夫がしてあり、平易な説明を施そうとしている。また、平易な解説のものが当然売れるということになる。サルでも分かるとか世界一易しいとか、それぞれ、まるで「日本一うまいラーメン屋」という看板を掲げるのと同じ心理で、大人向けの、しかし内容は極めて子どもじみた経済入門の本が多々書店に並ぶことになる。図書館にも、その類の多いこと。
 ところが、である。このサルでも分かりそうな経済の本の説明が、実に分かりにくいということがよくある。あるいは、書いてあることは分かるがそれが今の経済状況とどう関わっているのか、自分の生活の何がどうなるというのか、実感が湧かず、依然として高校の一夜漬けテストの状況と変わりなく本を閉じるだけという、がっかりした思いを抱くことも少なくないのである。
 私は、図書館や書店でこの種の本を時々全部開いてみるから、これは確かである。もちろん、たんに私の物わかりが悪いというのもあるのだが、日本経済新聞に通じていて初めて、これらの入門書は読めるという、暗黙の了解があるような気がしてならない。
 前置きが長すぎたが、その私が見て、これは最も的を射た簡潔な説明と分かりやすさを備えている、と思ったのが、この本だったのだ。学習のためにも当然基本的なところで基本的な原理を伝えてくれる。そしてそれが、現実の社会とどう関わっているのかをきちんとつないでくれる。そういう意味で、これは「分かりやすい」本だと思ったのである。
 イラストによる説明がまた適切である。たしかにこれなら、中学生でも理解可能である。そして、社会を見つめる目を育ててくれるように感じる。教育的にも、優れた配慮が行き届いているように見えるのである。
 この本の基となっている、man@bowというサイトは2010年も健在である。こちらから、活動について調べることもできるし、学ぶこともできる。たしかに学校で習う経済理論が現実に即応しているとまでは言えないかもしれないが、基盤を理解しているときに、大切な視野が見えてくることは、どこの世界でもあることだ。案外、ビジネスパーソンが改めて見つめてみる価値が、あるかもしれない。
 ともあれ、経済に自信のない方には、お勧めの一冊である。




Takapan
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