本

『最新・日本経済入門』

ホンとの本

『最新・日本経済入門』
石森章太郎プロ
太田晴雄監修
夏緑脚本
シュガー佐藤作画
小学館
\1,200
2003.7

 2005年3月、日本経済が破綻する。だから資産を海外に疎開させよ。
 この本が主張していることは、これである。経済については無知であることを告白せざるをえない私が、うなずける経済の本は珍しい。これはマンガなのだ。各章末に文章での解説が加えられているものの、内容はマンガの中で誰かが喋っていることの補足に等しく、マンガを丁寧に読んでいけば、理解において困ることはない。
 後見人のヤワタ運送社長に見込まれて大学院で経済学を学ぶ青年、赤井が主人公。彼のような学者の空論では会社を救えないということで、クビになる。しかし社長の娘にも未練をもっている。赤井は、街で悪質な若者に襲われて困っていたところで、謎の易者に助けられる。事情を話すと、この易者、経済学ではなしに「経済術」を心得ていると分かった。目が開かれる思いで、赤井は弟子にしてくれと頼むが、仙人のようなこの老易者は、許可しない。ただし、日本経済が破綻する日を当てたら弟子にしてもよい、とだけ告げる。理論ばかり学び、そんな予言者めいたことができるわけないと焦る赤井だが、どうしても易者の弟子になりたいゆえ、易者の言葉の一つ一つを思い出して発想を得、自分なりの考えをまとめる。易者にそのことを告げに行くと、赤井を見直し、約束だから弟子にしようという。
 それが、2005年3月という数字である。
 他方、ヤワタ運送では、赤井と引き替えに、かつての赤井の同級生であった黒川を招き入れ、その提案するアメリカのプランを取り入れて、会社を建て直そうとしていた。黒川は悪意をもって赤井を追い出したばかりか、社長の娘まで奪い取ろうと目論む。赤井はどうしようもない。
 易者のもとで赤井は、具体的に資産を守る術を学ぶ。それが、海外に資産を移すことであった。実際に赤井のもつ資産を、海外に預ける課題を言い渡される。具体的にどこの国の銀行にすべきかも研究し、赤井は今回、香港に向かうことにする。銀行でのやりとりや手続きもすべてこの本は教える。また、経済史も易者から学ぶので、黒川が提案する方法はやがてヤワタ運送を破綻へ追い込むことは必定だと知る。なんとかして彼女に知らせたいがそれもできない。
 ストーリーは、これ以上暴露しないほうがよいだろう。ドラマはともかく、この本の主張ははっきりしているし、日本経済がこれからどこへ向かおうとしており、たとえばアメリカがどのような意図をもっているのかを説明している。
 幸か不幸か、大した資産をもつわけではない私には、縁遠い物語かもしれない。だが、保険に加入しており、つい最近も学資保険の契約をとったばかりの身としては、このマンガの筋書きが現実のものとなるのなら、怖いと思う。だが実際、数字としては日本の経済は、なぜ破綻しているといえないのか不思議であるくらいの様相を呈している。ダイエーが抱える巨額債務どころの話ではない。国の借金は、まもなく1000兆円に達する。そのときが2005年3月であるというのである。そして、その額になったとき、政府は預金封鎖をはじめ、借金を無にする策に出始めるという。なぜそう言えるのか。まさに、第二次大戦後の日本でそうした事実があるからだ……。
 それにしても、マンガというのは、いい手段だ。日本の古典にしても、学問の基礎にしても、マンガで説明されると実によく分かる。ただ、頁数は必要以上に多くなるわけだから、本は重くなるし、見方によっては資源の無駄だ。そして、無駄を埋めるために貨幣が流れると、経済は上方へ向かう。いやはや、経済はその原理からして不明なところがある。




Takapan
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