本

『こども地球白書2005-06』

ホンとの本

『こども地球白書2005-06』
林良博監修
環境文化創造研究所
ワールドウォッチジャパン
\2520
2005.12

 いつも私が言うことだが、子ども向けの本を、大人も読むとよいと思う。要点が分かりやすく、説明ももちろん理解しやすい。妙な遠慮も飾り言葉もなく、ストレートにポイントが記されている。子どもに分かるように記すというのは難しいことであり、それを成し遂げてあるというのだから、解説は本物である。
 この本は、ほんとうに読むとよい。いわゆる「環境問題」とは何のことか、その背景に何があるのか、実に明確に連ねられていく。そこでは、「セキュリティ」という言葉が一つのカギになっている。その意味の説明も、明晰である。「安全という質の確保」である使い方と、「量の安定的な確保」という意味とが紹介されている。そして、地球規模でのセキュリティを考えるために、若い人々への問いかけが行われる。世界人口が64億人だとすると、読者である「あなた」は、64億分の1なのである、と。
 決して、情緒的な記述には留まらない。戦争を避けること、武器を減らすこと、そのために国と国の関係、とくに力関係がどのようであるべきか、それを安定させるにはどうすればよいのか、などが、淡々と、だが力強く刻まれていく。
 そこには、「地球にやさしい」と自画自賛して環境に協力しているかのような気分になる、私たちの小さな慈善――時にそれが偽善ともなりうる――を微笑んでいる余裕などはない。きわめて現実的な、互いに同時代に同じ地球に生きる者同士としての交渉や折衝の問題にまで踏み込んだ、具体的な提案が続けられる。
 国連の働きの批判から、軍事費の具体的な反省など、ほんとうにどれもが切実で、また実行可能な歩みであると感じさせる内容である。
 これは、実に驚くべきことである。
 虚飾に満ちた大人の間での綺麗事など、どこかへ吹っ飛んでしまう。
 くり返すが、これは大人が読まなければならないレポートである。いや、読むだけではない。そこから、考えよう。そして、小さなことを始めてみよう。世界から入ってきたニュースに対しては、こうすべきなのではないか、という態度を取ろう。
 それが、地球に生きる一人としての、かけがえのない義務なのではないだろうか。




Takapan
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