本

『アイドルのウエストはなぜ58センチなのか』

ホンとの本

『アイドルのウエストはなぜ58センチなのか』
飯田朝子
小学館
\787
2008.3

 サブタイトルに「数のサブリミナル効果」と書いてある。これを本書では「数リミナル効果」と洒落て用いている。定義的に言うならば、「知らず知らずのうちに私達が数のイメージに意識を操作されてしまうこと」とされている。ちょっとした遊び心だが、これが要するにこの本のすべてである。
 数字の語呂合わせに始まり、数の呼び名に隠された深い関係を説明する。これだけで十分ミステリアスで、楽しい。その上、「ひとつ・ふたつ・いっぱい」という文化とまた違う、日本人の細やかな数に対する感覚が説き明かされていく。あまりにも面白いので、ここで私が偉そうに説明するのはやめておく。どうぞ本書をお読み戴きたい。
 日本語でいう様々な数、そして「百」「千」「万」などの示す内容感覚の違いが、畳みかけるように明らかにされていく。そしてこの研究グループの名前にもなっている、「オロチ」が取り上げられる。八俣大蛇、つまり「やまたのおろち」が本当に頭が八つであるのか、という問題が論じられる。私が幼いころ見た本の挿絵では、たしかに八つの頭であったが、数字的に八つであるというのは、原書にあるとは思えず、それを著者は、大蛇とは川を意味するのではないか、ということからまた、数字としての八を表すのではないのだろう、と位置づけている。
 この八が、曲者である。一目でそれとは分からない、たくさんの数を象徴するところから、だんだんこの八の怪しさに深入りしていく。
 そもそも著者の研究グループは、数の問題をあれこれ話題にしつつ、本のメインにはこの8を使おう、というふうに固まっていったという。8を横倒しにした∞の記号が、やはり8に隠されたイメージを保っている、ともいうのである。
 そうして、9割と名のつく近年の本のタイトルのブームと、それが8割であったときとどう違うか、そして割と%の語感の違いなどに触れた後に、いよいよその女性のウエストの8の数字について明らかにされていく。アイドルのウエストは、実際に数え上げてみても、58センチが多いのである。しかも、こんなに細い人は実は稀である、という暴露までなされて。
 その他、3の安定性は、三位一体のことは語られはしなかったが、それも無関係ではないだろう。キリスト教に関する話題もちらほら出てくるのだが、あくまでも中心は日本人のもつ概念である。
 論理的に構築された構成ではなく、読み物として楽しめるように配慮された、新書形式の本である。十分楽しめるので、実際に開いてみるとよろしいかと思う。惹きこまれる魅力はたしかにある。
 私もつい、日本古来の4色について、授業で使わせてもらった。ちょっとした蘊蓄にもなる。
 かつて『数え方辞典』についてもこの欄で取り上げたが、その著者でもある。まだまだ裏話的にでも紹介したいことはありそうなので、またこの新書の続編を期待したい。




Takapan
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