本

『知って安心かぜ対策』

ホンとの本

『知って安心かぜ対策』
小菅孝明監修
旬報社
\1470
2005.11

 風邪が流行り、風邪に対する関心が増す時期に売り出すのに絶好の本である。
 タイトルが漠然としているのもいい。とにかく、風邪に関心のある人は誰もが手に取ってみるからである。まさか、漢方薬を勧める本であるようには、外を見るかぎりは絶対に思えない。
 風邪のメカニズムや種類から、病院へ駆け込む必要のあるケースの見極めなど、役に立つことが多く書かれている。それが、薬の話題に変わったころから、ちょっとおかしくなる。市販の薬についてのQ&Aが進んでいく中で、さかんに「副作用」が強調されていき、そこへ漢方薬が登場するのである。すると、章を改めて、漢方薬のオンパレードとなる。
 なんだか、安売り商品のためにスーパーへ行って、実演販売につかまっていくような、想定外のことが起こったみたいだ。本の表紙に、漢方薬を見直そう、みたいな言葉の一つでも書いていたら、そんなふうには思わないだろうに、と感じる。
 この本もまた、見開きで問題解決を図り、可能なかぎりQ&Aを活かしている。今風の、読みやすい本のパターンである。たしかに、何をどうすればよいか、分かりやすいことは間違いない。
 でも、一読者としては、どうしても最初の一歩で躓いたまま、先へ進めなかったことは、申し添えておく。医師ならば常識なのだろうが、一読者としては、初めの頁で抱いた疑問が、どこにも説明されていなかったことで、疑念と共に読み始めたことを告白しておこう。
 それは、ウィルスとは何か、である。「かぜの80%はウィルス」と開始早々見出しがあるが、その頁に、「ウィルスが原因でないかぜもあります」と、「細菌」が挙げられています。さらに「マイコプラズマ」や「クラミジア」も。これらがどう違うかについては、一言も触れられていなかった。
 もしかするとさして必要ではないかもしれないような、かなり専門的な用語を、あちこちでちりばめて、その定義や説明はあまりしないでおくというのが、この本の一般的な姿勢のように思われる。これは、「私はこんな難しい言葉を知っているんだ。その意味も知らないんですか。ならば黙って私の言うことを聞きなさい」と言っているかのように見える。権威的に感じてしまうのである。
 おっと、私もそういう性質がありそうだ……。




Takapan
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