本

『「なぞ解き」活脳パズル』

ホンとの本

『「なぞ解き」活脳パズル』
多湖輝
小学館
\1365
2007.8

 多湖輝先生には、感謝している。『頭の体操』シリーズは、私がなけなしの小遣いの中から何冊か買った本だが、それが私の脳を活性化させたのは間違いない。パズルが好きになったのはその本に出会う前だか後だか知れないが、発想の転換ということについて、こんなに楽しく多くのことを学んだ本はない。
 ブレーンストーミング法の発案者である、アレックス・F・オズボーンのチェックリストにも触れられることがあった。一見行き詰まったような場合にも、見方を変えると、解決の糸口が見つかることを教えられた。
 考えてみれば、中学入試の算数の中には、このような発想を期待して解かせるものが少なくない。中学受験をしていない私が中学入試対策を教える側に立ったとき、こうした考え方は大いに助けになる。問題用紙を逆さまにして見せただけで、生徒たちが「あー」と理解したときなど、まさにその醍醐味を味わう。
 今回の本は、『頭の体操』シリーズの形式をひどく変えたというわけではなく、右頁に問題、その裏に解答という形で読み進める。
 テーマ的に言えば、思考法毎にまとめたということなので、「書き出して考えてみよう」「じっくり考えてみよう」「ものごとの裏を読もう」「図解してみよう」「立体的思考をしよう」「数学的思考をしよう」「常識を捨ててみよう」という項目で分けられていた。たしかに、どれもが中学受験の算数のためには必要な姿勢である。
 熱でぼうっとした頭で解き進んでいったが、今回は有名なパズルもあり、見た瞬間に答えたというものもいくらかあった。問題の難易度からすれば、さほど高難度ではなかっただろうと思うので、どなたにでもチャレンジできる素材ではなかっただろうかと思う。
 ただ、問題文そのものが少し曖昧な場合があり、厳密にはどうかと思われるものもあった。「裏返すと」とあるのが、裏返す向きを変えると答えが違ってくるという場合があった。この問題の場合、地図でいう北東-南西の方向で裏に返すと、答えが簡単に分かるという、解き方のコツが載っているとありがたかった。
 それから、違う解答があるだろうに、と思われたものもあった。
 アツシくんの寿司の問題では、私は答えはアワビだと思った。小学生のアツシくんが知っている漢字が使われていないのは、アワビだけだったからである。「口」「夕」「八」「力」は、小学生なら低学年でも、漢字だということは知っているはず。先に野菜クイズで漢字に直すネタを使った直後だけに、同じ発想とは、芸がなかった。
 4リットル升と5リットル升で3リットルの水を計る問題では、解答のような難しいことをしなくても、4リットル升いっぱいの水を5リットル升に移し、再び4リットル升に水をいっぱいにしてから、5リットル升に入るだけ注ぐと、4リットル升に残る水が3リットルということになる。
 北上していた車が再び元の国に入ったというものでは、囲まれていなくても、国境が波打っていればよいわけで、福岡では、九州自動車道が、福岡県と佐賀県とを出たり入ったりするところがある。
 2,3,6,9 で10にする計算は、9+6÷(2×3)=10 でもいいと思う。
 そして最後のマッチ棒パズルは、「3+9=-12」のうち一本だけ動かして正しい等式にせよ、というものだが、解答のようなインチキ臭いことをするまでもなく、「-3−9=-12」でよいのではないか。
 巻末に、参考図書が挙がっていたことも考慮に入れると、もしかすると、この本は多湖先生がきっちり作り上げた本ではないのかもしれない、と感じた。




Takapan
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