本

『環境問題を知りつくす本』

ホンとの本

『環境問題を知りつくす本』
山本茂監修
インデックス・コミュニケーションズ
\1575
2007.12

 誰もが「環境問題」と口にする。口にしただけで、負い目がなくなるかのような錯覚をしているかのように。
 環境問題の解決のために、これをしよう、あれをしなければ、と宣伝する人がいる。町内各家庭に、そのためのチラシを熱心に撒いている、宗教色に染まったグループもある。
 これをすればエコの生活、などという触れ文句もあるが、深く考える人には、それが当然嘘であることが分かる。人間は、どこまでいっても、環境を壊しながらしか生きていけないのである。誠実になれば、人間は死に絶えるほかないであろう。
 だから、何をどう問うことが必要なのか、ということからはじめ、現に起きている論議はいったい何を検討しているのか、それはどういう意味があるのか、など、具体的な営みをまず知ろうということが、最初にあってもいい。思い込みによる価値判断を避けて、まずは冷静に事態を把握するのである。ところが、そのときに適切な本が、案外ない。私たちが知りたいのは、そもそも環境問題ということで、何が問題になっているのか、そのひとつひとつの事柄である。それらは、自分の生活にも深く関わっているので、自分もできることがあれば、したいと考えているし、その行動の意味も理解した上で、やりたいと願っているのである。
 タイトルにある「知りつくす本」というのは、オーバーには違いないが、率直な印象では、かなり広範囲に知ることができたという気がしている。
 この本には、「さくいん」も付いている。ふと身近な現場やニュース報道で、環境問題に関する言葉を耳にしたとき、すぐに事典代わりにでも用いることができる。
 見開き2頁に一つの話題を必ず埋め込むようにしているため、項目によっては、それでは説明が足りないという場合と、2頁では多すぎるとして間延びするような場合とが、あるかもしれない。
 しかし、それが調べやすさのために貢献しているのであるから、読者としてもその辺りをうまく活用したいものだ。
 話題は、環境破壊の具体的なところを、ともすれば私たちが見落としがちなあたりを中心として、説明し始める。温暖化などの気候に関する検討がそれに続き、私たちの生活のレベルで環境問題とどのようにつながり関係しているか、が考えられる。さらに、エネルギー問題の具体的な項目と、私たちにできる実例の紹介へと続く。
 これは、フィクションではない。私たちは、その問題にさなかに生きている。私たちの行動が、地球という船の針路を悪くするか良くするかを決定してゆく。
 環境問題は、ファッションではない。




Takapan
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