本

『漢字と日本人』

ホンとの本

『漢字と日本人』
高島俊男
文藝春秋文春新書198
\756
2001.10

 なんとも読みにくい本である。ですます調とである調とが、無秩序に混在している。こちらが予想するような文脈を外してくるので、ひっかかりもっかかり読まなければならない。普通の作文技術からすれば、これはタブーな表現方法である。
 だが、もちろん著者は、それを計算ずくでやっている。頭のいい人だと思う。
 しかも、表向きはかなり丁寧な素振りで、ずいぶんと横柄なものの言い方を展開する。読んでいて不愉快に感じることも少なくなかった。
 だが、そのアクの強さとでもいうものが、魅力なのだろう。人気のあるライターなのである。
 さて、内容からすると、日本語において、あるいは日本人において、漢字はどういう役割を果たしてきたのか、果たしてゆくのか、そんなことについての本である。
 読んでいると、まるで、テレビのエンタメ調の番組――昨今はNHK教育テレビが大抵そういう部類に入ってしまっていると思うが――を試聴しているかのような気分になってくる。
 つまり、主張がよく分かるし、なるほどと思える部分ばかりが、読後に残るという仕組みになっている。やられた、という感じがする。
 相当な教養が得られる、お気軽な新書である。感情的にさえならなければ、きっとあなたの日本語理解のために役立つ本となるであろう。




Takapan
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