本

『神さまがくれた漢字たち』

ホンとの本

『神さまがくれた漢字たち』
白川静・監修
山本史也・著
理論社
\1260
2004.11

 白川文字学として有名な、白川静氏。その努力の結晶なる『字統』などは所有できないが、簡素な『常用字解』は買っている。従来の漢和辞典の解説とは全然違う説明で、漢字をずいぶん宗教的に解釈しているという印象だった。
 確かに、甲骨文字の発見から解読といった作業は、比較的新しい研究であり、それを踏まえて漢字というものを理解していくとなると、伝統的な考え方では済まない部分も出てくるに違いない。
 それよりも私は、漢字に託された中国の先人たちが、神に対して、聖書と決して違う感覚を抱いていたのではない、というところに、一番の驚きを見た。漢字の本来の意味や世界観を調べるだけで、十分福音が語れると感じたのである。
 この宗教的な理解は、「口」という漢字の捉え方に象徴されている。これは、顔の口ではなく、大抵の場合、神事に用いる器を表しているという。曲がりなりにも、国語を子どもたちに教えるときに出会う、さまざまな知識の中で、私はたしかに、顔の口では説明できない事態にしばしば遭遇していた。そんな中、それが宗教的な意味であるという説明は、はたと膝を打つ知らせとなった。
 この本は、その白川漢字学の成果を、一つの「物語」として、小学生高学年にも読めるように工夫されて作られたものである。もちろん、それはいつも私が言うように、子どものために優しく書かれたというものではなく、誰にも分かりやすいように説明するという困難な課題が成功している例であると捉えられるべきである。
 何より、題がいい。まるで、キリスト教会で語らせる説教の題みたいではないか。
 このシリーズ、ヤングアダルトのための「よりみちパンセ」というものであるが、実にいい。青年たちに購入しやすいように、あと少しだけ価格が落とせたら最高なのだが、そのためにも、多くの大人に注目されてほしいと思う。少なくとも、図書館や学校の図書室では、がんがん仕入れて欲しいと願う。こんな魅力的な編集の本に出会うと、若者たちは本が好きになり、読書が好きになっていくであろうと期待する。
 私は珍しく、購入した本として、ここに記している。




Takapan
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