本

『じょうずにかんでしっかりゴックン』

ホンとの本

『じょうずにかんでしっかりゴックン』
井上美津子
芽ばえ社
\1299
2004.7

 小児歯科学の助教授である著者が、赤ちゃんのときから幼児期を迎えるまでの、歯と噛む働きについての詳しい説明を施している本である。
 内容が濃い。さすが歯科学と言わざるをえないような、専門的な知識もまじえつつ、子どもたちの咀嚼の仕組みなどが明らかにされていく。
 我が家にも今一歳の子どもがいるせいか、興味深く拝見させて戴いた。あまり噛まずにどんどん食べているような気がして、これは何とかしなければならないという気になってきた。
 歯科学という権威の旗の下にあるせいか、説明はたいそう科学的で、専門的であった。これ以上ないというくらい、素人相手には詳しい説明がなされており、乳児の呼吸のメカニズムなどを含め、たいそうな物知りになることができる本である。
 だが、さあ子どもに何をどう食べさせればよいか、など具体的な事態に向かうときに、この本の説明で何かが示されるということは、あまりないように感じた。専門的なメカニズムに長けている反面、では親はどうしたらよいか、という示唆に乏しいのである。あるとすれば、歯科医としての一つの意見がこうです、というものに過ぎず、親が実際にどのようにこの噛む問題について子どもを導くかどうかは、すぐには見えて来ないのである。
 要するにどのことについてどのように改善すればよいのか、がサッと目に入ってこない。
 文章が多く、歯科学的な写真などが豊富にあり、専門的知識をお持ちの方は親しめるだろうが、一般人としては、もっと育児の中で端的に何が大切かを強調してもらってもよかったのではないか、と贅沢を言ってみたい気がする。




Takapan
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