本

『カミとホトケのあいだ』

ホンとの本

『カミとホトケのあいだ』
宮田登
吉川弘文館
\2730
2006.7

 シリーズ「宮田登 日本を語る」の第6巻。これだけ見つけて読んだわけで、他の巻については知らないことをお断りしておく。
 民俗学的手法で、日本とは何かを探求した研究家であるらしい。また一部の人にたいへん慕われていたようで、それを信奉する人々によって、刊行が成ったように見受けられる。
 あいにくその方面には詳しいとは言えないので、学問的なコメントをすることはできない。
 柳田国男という大きな礎石を踏まえて、それを継ぐような仕事をした人なのだろうと思う。こういった仕事も、必要なものだ。たんに政治的な意味で神道を重んじるような勢力もある中で、庶民として日本人が本来どういう心を保ちながら生きていたのかを探るのである。考えてみれば、歴史という研究は、為政者と貴族の歴史に過ぎない。市井に生きた人々の生活は、歴史として残りはしないし、学習もしないわけだ。だがたとえば、政治的意図からもちあげられた宗教というのは、庶民信仰と同じであるとは言えない。それと同様に、歴史も、大多数の人々の感覚とは違うものが歴史であるに過ぎないのだ。
 民俗学は、そのあたりを掘り起こす。名も無き人々の中に生まれ、継承された知恵は何か。私たちは、どのような空気の中で生きているのか。それは、政が決めるものではないはずだ。
 七福神や地蔵などの例を引きながら、人々の間に受け継がれた信仰について紹介をする本書は、ふだんの生活の中に潜む習俗の由来に目を向けさせてくれる。
 十日戎とか弁天さんとか大黒さんとか、親しみをもって参りに行く人々の背後にあるものは、何だろうか。クリスチャンも、ただこうしたものを遠ざけるだけでなく、その理由や背景について、捉えておくことは悪くない。それが、伝道ということであり、ギリシア人にはギリシア人のように、ユダヤ人にはユダヤ人のように、というパウロの魂につながるものではないかと思う。
 それにしても、本の性質上仕方がないのかもしれないが、ちょっと値が高いだろうか……。




Takapan
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