本

『すぐわかる日本の神々』

ホンとの本

『すぐわかる日本の神々』
鎌田東二監修
執筆稲田智宏・堀越光信
東京美術
\1890
2005.12

 神道には、聖典があるわけでもなく、従って教義の基準というようなものもないらしい。そもそも、そうしたカノンを持たないというところが象徴しているものこそ、神道の姿であると言えるのかもしれない。
 ともすれば、それは国家宗教と重ね合わされて語られる。いや、国家宗教と同一視されている面もある。だが、それはむしろ、国家宗教に対抗する者にとっても、実は不利となる場合がある。神社にはそうでない部分が広く、その広い背景の部分を、国家宗教を擁護する者が取り上げることによって、国家宗教までもが正当化される理論となりうるからである。
 この本は、実に簡潔に、だが的確に、神道について教えてくれる。そうだったのか、と感心することが、各頁にあるというのもあながちオーバーなことではないだろう。
 およそ整理することが不可能であろうかと思われる神道の歴史と知識を、効果的に伝えてくれるものとして、写真も含め、実に有用な書物であると思う。
 それはまた、軍事目的であったためにかつて神道を利用した為政者たちをも浮かび上がらせる。いや、それは過去の話だけでは済まないかもしれない。今の為政者たちも、その列に並んでいるかのように思えてくるからだ。
 重層的な構造の中で、次元の違うところで反論されて、大切な意見がごまかされることのないよう、私たちはもっと、神道そのものについて理解しておいてもよい。そのために、小さなこの本は、大いに役立つものとなるであろう。
 日本人にとって「神」とは何か。キリスト者が気にしていくべきテーマにも、強く触れられている。そもそも、「イントロダクション」の中で、一神教のことに触れつつも、神道の「無」の意味が説明されるところで、すでに、これは読む価値がある、と思わせることにも、成功しているのではないかと思うのだ。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります