本

『紙の知識100』

ホンとの本

『紙の知識100』
王子製紙編著
東京書籍
\1575
2009.6

 いかにも紙についての蘊蓄が綴られているような本である。淡々と記されている。どちらかというと、堅い印象を受ける。特に面白みがあるようには見えない。昔の真面目な本のようだ。そう言えば、表紙にも文字だけで、何のイラストもない。
 だが、興味をもって読むとこんなに面白い本もない。
 とにかく、知らなかったことが多すぎる。それが、へえと思えるような仕方で書いてある。通り一遍の知識など通用しないのだ。紙についての、これはプロフェッショナルな知識がぎゅうきゅうに詰められた一冊なのである。
 ボール紙が板紙、つまりボード紙であることを初めて知った。お恥ずかしい。知っているつもりでいたことが、全然知らなかったということに、これほど多く出会う本も珍しい。あまりにも身近な紙、毎日使っている紙、それがどのようにしてできているか、どのような工夫がなされているのか、全くと言っていいほど知らない自分に出会うための本であるような気もしてくる。自分探しにはもってこいではないだろうか。本当の自分探しとは、そのような性質のものではないか、とまで思えてくる。
 製紙会社そのものが編集している。これほど詳しいことはない。それでいて、あまりにも専門的過ぎるとも言えないだろうと思う。適度に、一般に分かりやすい説明が施されているのは間違いない。と同時に、そこらのライターさんでも書けるような内容では、全くない。これは、高度に専門知識のある人でなければ、書けないであろう。
 というわけで、その内容を私がかいつまんで伝えるなどということは、殆ど不可能なのである。でも、とにかく面白かったのは間違いない。紙だけに、裏事情というものも確実にあるのであって、製紙業界はそれなりの苦労を背負い、配慮をしつつ、消費者の無理な要求を叶えるために日々苦心しており、製造も細心の注意を払って行われていることが、伝わってくること請け合いである。
 特に個人的には、リサイクルの仕組みについて詳しく書いてあるのが印象的だった。そこには一読しただけでは私などには気づかれない問題があるのかもしれないが、この本はできることやできないことについて、誠実に叙述しているように見えた。
 シュレッダーはよいことのようにも思っていたが、資源の再利用という点では全く厄介なことであることも、きちんとした理由が説明してあると、納得せざるをえなかった。
 この内容にしては安い。シンプルな教科書のようなつくりだが、本としてしっかりしている。これは手に取って損はしない一冊と言えるだろう。




Takapan
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