本

『どうして会社に行くのが嫌なのか』

ホンとの本

『どうして会社に行くのが嫌なのか』
大美賀直子
アスキー新書026
\760
2007.9

 月曜日は憂鬱になるというサラリーマンが多くいる。統計的には、自殺も月曜日に多いのだそうだ。
 メンタル・ジャーナリストとしての著者が、ストレスを抱えずに会社での生活を過ごしていくための、メンタルな工夫や知恵を、この本で明らかにしていく。
 それは、理論を根底においた上で、ひじょうに具体的な知恵として示されていくので、私たちにとってもすぐに実行可能なものが多いように感じた。
 そもそもどうして月曜日にそう感じるのか。その分析と、様々な実例とを紹介する。それから、そこに潜む「人間関係」というものの正体を明らかにし、会社での人間関係はほどほどにすべきだ、という、やや距離を置いた見方を推奨する。
 それから、何も自分の責任という意味で抱え込む必要はないが、自分の気持ちのもちようで切り抜ける方法があることも教わる。これは注意をしないといけない。よけいに鬱的になりかねない方策なのであるが、2割の事柄のほかは、諦めてもよいのではないか、など、適用すれば気が楽になることが期待される考え方が提唱される。これをうまく取り入れていくと、重荷が減りそうな気がする。
 最後に、早寝早起きの勧めやバランスのとれた勉強の姿などが紹介され、より心が軽くなるような、未来の創造が画策されている。
 好感がもてたのは、著者が、自分の苦い体験を時折見せてくれることだ。いや、今なお、自分に備わる癖などもあからさまにして、何も自分だけはすべてを克服した模範的な人間だなどといった姿勢を見せないことである。女性としての細やかな思いやりがそこにあると見ることもできようが、やはりこれは個人の資質の問題ではないかと私は考える。自分の成功談ばかり聞かせられると、よけいに読者の側ではストレスを感じかねないことを、よくご存じなのだろう。
 このように、ノウハウを教えるいわゆるハウツー本においても、高いところから教えてやるぞと言わんばかりには決してしないスタンスが、望ましいと私は考える。それはなかなか難しいことでもある。ちょっとした断定をしただけで、偉そうに、と思われるのが常だからだ。何もこの本には、心理学の理論や説が網羅されているわけではないばかりか、そうした学術的な記述はまず見られない。いずれも会社という場を舞台にした、ありがちなシチュエーションから学んでいくことになる。それは、実例やケースと共に、理論も踏まえているゆえに、読者にしても、「なるほど」と納得できるところが多いのではないかと思う。読み進んでいくと、何か自分の場合にヒントとなるものに、きっと出会えるのではないかと感じた。




Takapan
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