本

『飼い猫のひみつ』

ホンとの本

『飼い猫のひみつ』
今泉忠明
イースト新書Q
\800+
2017.9.

 イースト・プレスという、独特な世界の出版を好む会社から、この手の新書がいくつかあるらしい。著者は、類書も著わしている。失礼だが、古書店で110円で見たのでなかったら、わざわざ買わなかったことだろうと思う。いくら猫が好きでも、猫の本を見るたびに買っていたらきりがない。
 飼い猫というから、いわば「イエネコ」に的を絞った内容であると言えるだろう。だが、感覚的には、私たちにとり猫というのは大抵これである。気取った海外の猫を集めるような高尚な趣味はないので、実質「飼い猫」というタイトルにする必要はなかったのではないかと思う。後半は特に、その辺りをうろついている猫たちを追いかけるような形でレポートされているので、ますま「飼い猫」とは言いにくい情況になってしまっているのだ。
 間違っても、猫の飼い方を期待してはならない。だからこのタイトルはよくないと思うのだ。そう誤解させる言い方だからだ。本書は新書形式であり、殆どが文章である。イラストは、たまに素人っぽい絵があるが、それほど必要性は感じない。白黒写真もたまにあるが、室内で飼われている猫の写真ではない。冒頭のカラー写真の頁で、少しばかり猫ちゃんが載せられているが、そのどれもが野生の猫の情景で、世界の猫を映し出している。これでは益々「飼い猫」ではなくなってしまう。
 では本書には何が書いてあったかというと、猫と人間の関係の歴史、これである。特に猫のミイラをはじめとした、エジプトでの猫と人間については熱く幾度も語られている。ネズミ退治を目的として猫が人間と近づいてきたのではないかという推測をし、また、飼い慣らすには難しい猫と人間との接近についての想像なども交えて、エ イースト・プレスという、独特な世界の出版を好む会社から、この手の新書がいくつかあるらしい。著者は、類書も著わしている。失礼だが、古書店で110円で見たのでなかったら、わざわざ買わなかったことだろうと思う。いくら猫が好きでも、猫の本を見るたびに買っていたらきりがない。
 飼い猫というから、いわば「イエネコ」に的を絞った内容であると言えるだろう。だが、感覚的には、私たちにとり猫というのは大抵これである。気取った海外の猫を集めるような高尚な趣味はないので、実質「飼い猫」というタイトルにする必要はなかったのではないかと思う。後半は特に、その辺りをうろついている猫たちを追いかけるような形でレポートされているので、ますま「飼い猫」とは言いにくい情況になってしまっているのだ。
 もしかすると、「飼い猫」という言葉で、一軒家で猫を飼っており、自宅はもちろん、周辺の地域を自由に歩き回ることができる猫を想定しているのかもしれない。だが、マンションの中で飼うとなると、基本的に、家の中に居させるだけで、外に連れて行くときにはケージに入れて運ぶということしかできないのが基本であろう。マンションの敷地内でも、自由に歩かせてはいけない、というのが通例だと思われる。このタイプで猫を飼っている人が本書を、タイトルだけで買ったとしたら、思っていたのと違う、という気がするのではないだろうか。「猫のひみつ」なら、そうは思わないだろうが。
 また、間違っても、猫の飼い方を期待してはならないが、そう思わせる要素がタイトルにあるように感じる。このように、このタイトルはよくないと思うのだ。そう誤解させる言い方だからだ。本書は新書形式であり、殆どが文章である。イラストは、たまに素人っぽい絵があるが、それほど必要性は感じない。白黒写真もたまにあるが、室内で飼われている猫の写真ではない。冒頭のカラー写真の頁で、少しばかり猫ちゃんが載せられているが、そのどれもが野生の猫の情景で、世界の猫を映し出している。これでは益々「飼い猫」ではなくなってしまう。
 では本書には何が書いてあったかというと、猫と人間の関係の歴史、これである。特に猫のミイラをはじめとした、エジプトでの猫と人間については熱く幾度も語られている。ネズミ退治を目的として猫が人間と近づいてきたのではないかという推測をし、また、飼い慣らすには難しい猫と人間との接近についての想像なども交えて、エッセイとして読んでいくのに大変適しているように感じた。
 そうした歴史的発見の中での猫の存在が、本書の随所でアピールされる。また、世界史の中で猫が迫害された時のことも書いてある。魔女裁判のときに大量に殺され、西洋での猫の不吉さなどのはじまりが、やはり著者による陰の部分の歴史であろうか。しかしこうした雰囲気は、どうしても歴史探究である。「飼い猫のひみつ」からは完全にずれている。
 意外だと思ったのは、旧約聖書をきちんと調べてあったこと。ノアの箱舟の物語の経緯を、普通の人は寄らないところにまで寄って、細かくレポートしてあったのには感心した。尤も、聖書とは全く関係のない伝説を必要ないほどに詳しく教えてくれていたが、私も聞いたことのない不思議なお話があるものだと驚いた。
 最後のほうは、ノラネコを追いかけて調べたことが綴られている。ノラネコの習性や、集会事情などがよく分かった。が、もうくどいくらい申し上げるが、それは「飼い猫のひみつ」ではない。ここにあるのは、猫と人間の歴史と、猫の生活である。その辺りの題で、よかったのではないだろうか。本の中身については、十分楽しめたことを、私は認めるのだから。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります