『「科学・技術の歴史」が一冊でまるごとわかる』
白鳥敬
ベレ出版
\1900+
2024.10.
300頁、たっぷりと読ませてくれる。図表も充実しており、分かりやすい。
科学と技術というテーマであると、どうしても著者の価値観が表に出やすい。事の善悪を論じてみたくなるものだ。もちろん、科学思想や特に技術の開発は、社会的な影響を与えるし、社会的な背景から生まれもする。そのことについては触れなければなるまい。しかし、そこに走っていくと、肝腎の基本的な了解が疎かになるかもしれない。
本書は、そのバランスがいい。基本的に、端的に科学と技術の発展が、それぞれ比較的短いスパンで、簡潔に説明してあるのだ。
まずは、「火」への着目あたりから始まり、石炭や石油から電気エネルギーへの人類史における大きな流れを確認しておき、「科学」と「科学技術」の違いと、「科学倫理」の存在に触れておく。本書に価値判断があるとすればこの辺りなのだが、留意点が挙げられる程度に留まり、著者がどちらかに導こうとか、こうなんだと訴えるとかいう意図で記しているわけではないだろう。
そこからは、淡々と歴史を辿る。古代の天文学にも注目する。暦の知識はなかなかのものだった。ただ、やはり科学と技術という観点からすると、近代ヨーロッパの思想からが本格的なものとなる。その意味で、本書は、アジアや中東などの思想に触れることはなく、オーソドックスに、現代科学につながる西洋思想を辿ることになる。
ガリレオ・ガリレイや地動説への移行が、本書の根幹の、ほぼ始まりだと異ってよいだろう。伝説と史実との区別にも触れながら、科学史における意義にきっちり触れて叙述が進む。ガリレオについては、その「観測」についての意義が強く示されているように見えた。
科学思想という意味では、デカルトの位置を明確に出しているのが、並の科学史とは異なるかもしれない。しかし、この時期は、基礎科学と発明の意味が大きい。顕微鏡や望遠鏡、印刷技術や火薬はもちろんのこと、真空や光の粒子説と波動説、光速の測定からエーテルの否定など、17世紀までに、実のところかなり科学思想は展開している
続く章は18世紀を辿る。ここで現代技術につながるものがずいぶんと芽生え始める。蒸気機関は産業革命を促し、電気の発見は実に大きかった。宇宙観も大いに変わり、元素の知識が与えられるし、エネルギーという見方も現れる。そして電話に至る通信技術の現れは、世界を実際的に変えてゆく。
19世紀になると、元素は周期表の中で捉えられるようになり、より体系的に物質を利用できるようになる。電磁波と絶対零度の発見は、技術を大きく変化させるに至り、この時代にエジソンが登場する。
そして20世紀、相対性理論はもう百年以上も前のことなのだ。ここから科学は急激に変化する。放射能から原子核物理学へと展開死、量子力学が現れる。素粒子の発見は宇宙への視点をも換える。天文学も驚異的に発展することになるのである。しかし、この物理学は、核爆弾の実現をも可能にしてしまった。
20世紀は後半という場所をも特別に設けられていた。集積回路は軽量化を実現し、レーダーやアンテナは、戦争をも変えていったのである。項目的には「科学技術を一変させたレーザーの発明」と掲げられているが、私は「レーザー」という言葉が Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation の頭文字だということを知らなかった。チューリングマシンの原理は今日のコンピュータ社会を呼び招くこととなり、現在に至ることとなった。
終わりに、「航空技術」について、いやに詳しく書かれてあるのが気になった。著者がお好きなのだろうか。他の領域よりも、かなり入れ込んでいるように感じたのだが、錯覚だろうか。
最後に、あまり知られていない日本の研究者が数人取り上げられている。こういう企画はいい。科学者仲間では有名なことであっても、あまり光が当たっていないところに、もっと目が向けられてもよいと思うので、こうした点に触れていることは、大きく取り上げたいと思った。
各章の末尾に、簡単な年表がある。振り返るのに相応しい。教科書調の本書は、なかなか優れた入門書であると思う。著者はサイエンスライターであるが、その道では専門のようである。だから記述には手を抜いていない。そして、素人目線も保っている。また、航空力学についての著書も複数あることが「著者紹介」で分かった。なるほど。

た
か
ぱ
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