本

『樹液に集まる昆虫ハンドブック』

ホンとの本

『樹液に集まる昆虫ハンドブック』
森上信夫
文一綜合出版
\1470
2009.7.

 小さな薄い本なので、価格は高いと感じる。が、開いて見ると、そうは思えなくなる。持ち運びしやすいサイズの本に、決して小さな字でもじゃもじゃと書かれてあるわけではないのに、写真も文字も、実に情報量が多い。コラム的に興味深い記事も随所にある。不思議な気がする。これだけの小さな中に、痛いところ痒いところに手が届くような内容がふんだんに盛り込まれているのだ。
 昆虫の写真も、通り一遍のありきたりのものではない。木の隙間に潜り込むクワガタのおちゃめな姿や、スズメバチを抑え込むクワガタの勇姿には、よくぞこんな写真がと驚かされる。樹液の順番をじっと待つアマガエルの表情が見えると、ついセリフの一つでも書き込んでみたくなる。
 これは、樹液に集まるというコンセプトで集められた昆虫の資料である。これがまたいい。虫捕りに行ったとき、今日は甲虫だけ捕ろう、と決意して行くことは稀である。私たちは虫捕りに行くのは、「場所」に行くのだ。森に行く。虫を探す。樹液に虫が集まる。樹液の出るところを見つけて観察し、捕獲する。となると、この本のように、樹液という場所でまとめあげた昆虫の情報は、たいへん実用的で適切な分類となるのだ。
 従って巻末のところは、樹液を出す「樹木」の図鑑となっている。これで、森に行くのが楽しみになる。そこではどんな社会ができているのか。どんな虫が現れるのか。どんな力関係になっているのか。虫はどこから来て、どこへ行くのか。興味は尽きない。
 そういうわけで、見た目以上に、この本は威力がある。




Takapan
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