本

『ジュニアのための科学研究ガイド』

ホンとの本

『ジュニアのための科学研究ガイド』
1 もののしくみを追究
愛知県刈谷市児童生徒理科研究推進グループ
誠文堂新光社
\997
2004.6

 夏休みになると、自由研究はこれだ、ふうなガイドブックが沢山書店に並ぶ。売れ筋だからだ。図書館でも、その手の本はたいてい貸出中ということになる。
 そういう紹介本の通りにやってみて発表する、という方法もある。考えなしにやるならば、それが一番見映えがよい。先生も感心する。だが、昨今の先生は、この手のマニュアル本を知っているから、できすぎた研究は用心なさる。
 その意味からすれば、この本も危ない。
 しかし、他の紹介本とは決定的に違うところがあると思う。それは、「科学する」心を育てるという点である。
 ただ通り一遍に、研究発表の形式をとればいい、というふうな安易な考えで作られた本ではない。理科好き、科学好きな人が、なんとか子どもたちにも理科を好きになってほしい、という願いや祈りをこめて作った本だということが、ひしひしと伝わってくるのである。
 なぜだろう、どうすればうまくゆくか、そういう素朴な疑問がテーマとなるのだ、ということを説明するのに、最初の貴重な数ページを消費している。そして、例題として挙げられた数々の疑問と実験が、終わりまで展開される。
 私は野球が好きだし、「重いボールと軽いボールの違いは何?」を真っ先に開いた。すると、研究レポートが告げていたことを読んで、思わず「へぇ〜」と唸った。それはまた、私が無意識のうちに、子どもに投げる球を重くするとき、軽くするときに使い分けていた方法と同じだったのである。
 チョークの折れ方の調査、ピンポン球が水中深く沈めたからといって高く飛び上がるわけではないのかなぜか、容器の注ぎ口はどんな形が注ぎやすいのか、古い雑巾はなぜ固くなるのか……もう、私の心をくすぐりっぱなしである。
 これらのテーマは、スタッフがかなりの手間暇をかけて実験して、一つの解き明かしを行っている。だからといって、問題が解決されたわけではないところが、またミソである。レポートの最後に、では……とテーマを深める問いかけがなされていて、そこでプツンと終わっている。
 さあ、調べてみようではないか。子どもといわず、大人もやってみよう。人任せにしないで、自分で考えるということを、忘れた私たちへの挑戦なのだから。




Takapan
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