本

『日本人の好きなもの』

ホンとの本

『日本人の好きなもの』
NHK放送文化研究所世論調査部編
NHK出版生活人新書242
\735
2008.1

 データで読む嗜好と価値観。そういうサブタイトルが付いている。
 調査そのもののデータを公開すると同時に、その分析がなされている。押しつけがましい感情的な分析ではなく、淡々と特徴を紹介する文章が置かれており、それは簡単なようで、案外真似ができないものだと感じている。
 とくに、世代別や性別に調べたというだけでなく、男性に多い回答と女性に多い回答などを数値化して示し、様々な統計的手法を駆使して、意味のある結果を見つけ出そうとしている努力が、よく伝わってくる。
 また、そこには感情がないわけではない。そのことは、本の最後の部分になってようやくはっきり記されることになるのだが、この本は、「多様化」と「画一化」について問おうとしていたのだ。
 それを、まず結論ありきで、無理矢理データをそのように解釈するのでなく、予想のようにうまくいかなかったことまで、説明されている。
 興味本位で、「ある、ある」と、週刊誌掲載のアンケートのように喜んでこの本を見ることもできるだろう。だが、一見いろいろな意見があり、多様化の極みだなという見方をついしてしまう私たちを、実はメタレベルで画一的に塗りつぶそうとする恐ろしいものがあるのではないか、という思いに駆られると、逆に恐ろしくなってくるのではないだろうか。
 とにかく「好きなもの」についてのアンケートである。そのときの世の流行りの影響を受けるので、瞬間最大風速としてカウントされる好みもあるのではないかと思うが、概ね有意味な、そして統計学的にも納得のいく調査がなされているのではないか、という気がする。
 興味本位からではなく、互いの性や世代を理解するためにも、こうした調査を活用してみるとよいのではないかと思う。案外、教会の伝道計画の中にも、盛り込めるような内容であると、私は思っている。




Takapan
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