本

『自衛隊のことがマンガで3時間でわかる本』

ホンとの本

『自衛隊のことがマンガで3時間でわかる本』
深川孝行
飛鳥幸子マンガ
明日香出版社
\1,365
2004.2

 2月発行なのに、4月からの消費税の表示システムに対応している、感心な本である。4月以前に出版されたものに、これがなされてある本には、ほとんどお目にかかったことがない。
 ともかく、この本は「3時間」で分かるという。私は電車の行き帰りに読んだから、2時間より少ない時間で分かった。ほんとうによく分かった。
 1項目が見開き2頁にわたって説明されているが、左側のページにはマンガまたはイラスト、右側のページにはコンパクトだが実のある説明がなされている。
 配列も心憎い。まず、自衛隊はイラクで何をしているのか、ということを説明する。そうした中で、自衛隊員の給料や生活についても紹介する。ひととおりイラク問題が説明されると、そもそも自衛隊とは何だという問題に注目させる。とくに軍隊との違いを出すために様々な呼称を変更していることや、法律的にどのような立場で区別されているのかなど、実に興味深い。
 自衛隊組織やその日常生活も明らかにされていくと、自衛隊のもつ武器の性能が検討される。それは世界の軍備と比べてどうなのか、能力的な面ではもちろんのこと、金銭的な面でも比較される。
 そして最後に、仮想敵国との戦闘を想定したストーリーが語られる。かつてソ連を仮想敵国としていた時代に大量に配属された北海道の師団が、今や意味なくなくってきたにも拘わらず、現地の経済的理由のために残されていること、その戦車は西日本へ連れてくることがほとんど不可能なことなど、現実の問題もシビアに語られている。そしてその仮想敵国は、はっきりと北朝鮮だとして、考えられうるケースにどう自衛隊が出ていくのか、紹介されている。
 ともすれば、自衛隊バンザイの右派勢力は、左翼的思想を頭からバカにしたり、軽蔑したりするような態度で勝てば官軍的に高見に立って笑っている。そればかりか日本の伝統だとか何とか言い始めて、いわば詭弁を用いて、自衛隊やら天皇やらを誉め讃えることばかりする。そうして自衛隊を擁護しているつもりなのだが、やり方が下手だと思う。
 この本は、その意味では右とか左とかいう傾きは感じられない。現実問題として、自衛隊とは何なのか、自衛隊は想定される有事のときにどう出ていくことができるか、どう出ていくつもりなのか、そのときにどんな問題がありうるか、という重要な点について、冷静に解説していくのみである。そして、現実に置かれた自衛隊というものについて、私なりに理解を深くすることができたように思う。それにしても、近年の法律改正で、自衛隊が動きやすくなっている反面、首相の号令ひとつですぐにでも自衛隊が動き始めるということも分かり、私の頭にはふと「元帥」という言葉がちらつくようになった。
 とにかくこの方法なら、素直に読み進められる。そして私も、たくさんの知らないことを教えてもらった。この本よりも詳しい本はいくらでもあるだろう。だが、この本ほど短時間で多くのことを確実に伝えることのできる本は、そうめったにあるものではないだろう。
 待てよ。逆に言うと、ホームページもこのような説明の仕方をすれば、読み手は分かりやすいと好意をもってくれるのだ。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります