本

『勇ましく高尚な生涯』

ホンとの本

『勇ましく高尚な生涯』
竹脇真理
小学館
\1200+
2002.7.

 ある方からお薦め戴き、各方面探して入手した。「18歳で逝った若き信仰者の日記」という副題が付いている。クリスチャンの青年の日記が大部分を占める本である。家族が、それを見出して発刊するように動いた。
 実はこれは、1961年にいのちのことば社から出版されていたものである。復刊を望む声に基づいて、このように40年を経て復刊した。そして、それも多数の人により読まれている。それほどに、胸を打たれる内容なのである。
 教会に通う家庭ではあったが、いろいろな問題を抱える一家でもあった。その中で、まっすぐに信仰をもったこの真理(まこと)君は、本当に純粋に聖書を受け取り、イエスに従う道を歩んだ。高校生のための団体であるHi-B.A.(ハイビーエー)に属し、聖書によって自分の人生と使命を理解した。彼は才能豊かで、最高学府に進めるチャンスを持っていたが、自身は、世界へ福音を伝えたいと願っていた。周囲の友にも、事あるごとに聖書を勧め、信仰をもってほしいと願い、祈り続けていた。友の一人が自分の言葉で教会から遠ざかったようなときには、慟哭といえるほどに泣き、悲しみ、主に祈った。その様子は家族の証言もあるが、本人のこの日記の中からして、嘘偽りのない姿である。いつでもどこでも、そばにいる人に福音を信じてほしいと語り続ける、そうした生活を続けていた。
 それが、頭痛がするなどのことから、脳腫瘍であることが分かり、本人もやがてそれを知る。苦しみもあっただろう。しかし、絶望はしない。いくらか悲しんだにしても、それまでと同じように祈り続け、病室で他の病人に福音を受け入れるように勧める。病院のスタッフにもそれを説くほどである。最後に個室に移るときには、これでは福音が語れない、とそのことばかりを嘆いていたともいうのだ。
 驚くべきことである。
 この日記帳は、死後誰かに読んでほしい、と本人が強く願っていた。それが冒頭に掲げられている。家族はその願いを叶えてやり、また、世間の人々もそれを受け止めた。初めはいのちのことば社というキリスト教書籍の出版社であったが、後には小学館が出したほどのものである。表紙と扉のシンプルなイラストと、最初に掲げられた8枚の写真のほかには、図も絵もない。ひたすら文章だけのシンプルなものだが、それで十分だった。十分伝わってきた。タイトルだけを見ると、大げさなもののように見えるかもしれないが、まさにその通りのものだった。
 真理君をリードしていた方があとがきを添えている。もちろん、読者がキリスト教を受け容れてほしいという願いはあるだろう。だが、その言葉の終わりのほうで、これほどに自分のすべてを懸けてやり遂げるようなことがあったという事実に目を留め、今の若者にしても、こうしたものを求めているのではないか、それだけの価値あるものを、大人たちが子どもたちに示せていないのではないか、というような気持ちのこもった文章を置いている。
 この日記の中でも何度も出てくる、世話のやける弟無我というのは、名優竹脇無我である。2011年、67歳で亡くなったが、葬儀が行われた東京都民教会は、真理君の葬儀が行われたところでもあった。




Takapan
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