本

『インチキ科学の解読法』

ホンとの本

『インチキ科学の解読法』
マーティン・ガードナー
太田次郎監訳
光文社
\1785
2004.8

 いわゆる「怪しい」と思わせる本は、世に多々ある。科学書も思いつきの啓蒙書も、はたまた個人の霊感にのみ根拠をおく類の宗教的書物も、書店には同じように並んでいる。まさに玉石混淆といった事態である。
 その中で、どれを信用してよいのか分からない、という声が起こる。むしろそういう声を発することは健全である。出会うものすべてを信用しがちな、経験浅い若年者は、時にいとも簡単にひっかかる。金銭を投げ出したり、人生を犠牲にしたりさえする。
 ここでは、科学という名前で、実はでたらめであった、という事例を、当時どのように発表され受け容れられ、あるいは反発されたか、一例一例レポートしている。
 今私たちから見れば、こんなことあるわけないやん、と一笑するに違いないことも、当時の人々は真剣であった。他人事ではない。私たちもまた、健康ブームであれがいいこれがいいと噂をして実行するし、民間療法に頼ることもある。後で自分自身を笑うくらいならまだよいが、私たちが全人生をかけて信じ実践してきたことが、後世科学的にまるっきり嘘であったと暴かれたら――それを知ってしまうときが来たら――、何と空しいことだろう。
 こうした調査は、揚げ足取りのように見えるときもあるし、過去の偉人の愚かな一面を暴くとなると、イメージが崩れると非難したくなるときもある。たとえばこの本でも、エジソンが死者と交信する方法を真剣に模索していたという話を突きつけられる。だが、私は却ってそのことで、人間としてのエジソンを尊敬したくなる。人間は、あらゆる面で間違いを犯さないがゆえに偉大なのではなくて、間違いも含めた中で、どうやって人のためになる仕事ができるか、が問題だと思うからである。
 キリスト教も例外ではない。いや、黙示録と再臨問題は、この本の最後を飾る大きな話題となって提供されている。「目を覚ましていなさい」という言葉の受け取り方によっては、信仰もまた、インチキを提供してしまうのである。




Takapan
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