本

『イノチのつぶやき』

ホンとの本

『イノチのつぶやき』
藤田貴士
ジャパンマシニスト
\1260
2006.11

 どうして、人間に生まれてきたのか。  自分のどんなところが好きか。  悲しい体験で記憶にあるものは何か。  自分が大切にされた経験を覚えているか。    テーマはこの4つ。非常に主旨の明確な本である。アンケートの回答は、小学校の低学年・中学年・高学年・保護者に分けて、並べられている。ある意味でただそれだけの本である。回答は、類した答えを近くに並べるなどの工夫がなされている。しかも、ある意味で重要な答えは、ゴシックで太く記されている。  どうして人間に生まれてきたのか。その問いには、子どもは自然に「神さま」を口にした。神さまが決めたのだ、というふうに。そして保護者も、子どもたちとは全く別に、同じ質問を聞いて答えたわけだが、同様に並べられている。こうして見ると、その世代による特徴というものがあるのと同時に、確実に「神」が意識されていることが分かる。見に見えないものが沢山ある子どもたちは、知らず識らずのうちに、大いなる「神」という存在を了解しているのだ。  多くの別個の人々の回答であるから、バリエーションに富んでいるかと思うと、案外同様のパターンの中に流れ込んでしまっている。同類の回答を並べていくと、いくつも同じ回答がなされていたことがはっきりする。子どもたちの願いは、きっと、もっと神さまが身近であるに違いないのだ。  巻末の「おわりに」の本当に最後の部分には、心に浸みる言葉があった。 「肝心なのは、こどもを一人の人間として大切に扱っているか、こどもに尊敬され信頼される関係を築いているかどうか、ということではないかと思います」 「この世に生をうけた瞬間から、たとえ未熟とはいえ子どもは一人の人格者であると思います。それをふまえつつ、こどもたちとかかわっていられたらと願っております」  なんだか、私自身の願いを聞いているような気さえした。  子どもって、こんなことを考えているんだ。そんなことが分かるだけでも、この本の収穫は大きいと思う。




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