本

『いのり・聖なる場所』

ホンとの本

『いのり・聖なる場所』
フィリモン・スタージス文
ジャイルズ・ラロッシュ絵
さくまゆみこ訳
光村教育図書
\1890
2004.9

 世界のあちこちに 聖なる場所がある。 人はそこにあつまって、 いのったり、瞑想したり、 希望を語り合ったりする。
 こんな言葉で、この絵本は始まる。背景には、フランスのシャルトル大聖堂の精緻なイラスト。大聖堂の説明が小さな字でたっぷり記されている。
 以後、短い言葉の続きがゆったりとしたペースで展開し、イラストには、キリスト教に限らず、ユダヤ教やイスラム教、そして仏教の寺院も世界各地から選ばれて描かれる。ヒンドゥー教のもあり、表紙がインドの海岸寺院というものだ。
 シンプルな構成は、押しつけがましくなく、ただひたすら、人間が聖地を必要として歴史を刻んできたということを証ししているように見える。いや、頁をめくるごとに、自分の魂がたしかに聖なるものに触れて、ぴんとした空気に出会っていくのが分かる。
 絵本のお話の終わりの部分が印象的なのだが、そこは書評(紹介)の礼儀として、明かさないことにしよう。多くを語ることなしに、これだけ敬虔な思いにさせてくれる絵本も珍しい。まさに「宗教」そのものを扱っているからだ。
 最後に「読者のみなさんへ」というあとがきがあり、そこには、宗教についてのこれ以上簡単なものはないというほどの説明が載せられている。
 人間の歴史がはじまって以来、人はこんな疑問をいだいてきました:
  自分は、どこから来たのだろうか?
  どう生きればいいのだろうか?
  死んだら、どうなるのだろうか?
 これに対するさまざまな答えが体系的になって宗教となっていったというのである。
 私たちが「いのり」を必要としていることは、私たちの周りの社会と世界の姿を一目見れば分かる。自分を含めて、人はなんと愚かなことをしていることだろうか。上の三つの問いを正面に据えれば、争いも欺きも、なくなっていくものだろうに。




Takapan
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