本

『いまどき中学生白書』

ホンとの本

『いまどき中学生白書』
魚住絹代
講談社
\1575
2006.2

 法務教官として各地の少年院を務めた後、関西で、親や教師の支援に努めているという著者。多くの豊かな経験が、必ずしも古い思い出としてでなく、今ここにいる子どもたちの未来を守ろうとしている。
 惜しむらくは、タイトルから、内容が絞れなかったことである。この本は、中学生の一般を取り扱ったというには、窓口が狭い。ゲーム・メール・ネットという、メディアと中学生との関係から入口をこしらえたものである。もちろん、そこから若い世代全体に言えることへと展開していくのだが、「いまどき」という言葉を電子器具に限ったことは、十分ではなかったと思われる。長いタイトルの本は私も趣味が悪いと思うが、せめて表紙に、メディアを臭わせる何かを配置してほしかった。純文学の本のように、あまりにシンプルなのである。
 基本的なスタンスには同調する。「子どもは、きちんとした環境と手助けさえ与えられれば、自分自身を取り戻し、自分の力で歩いていける。子どもには、その力があるのだ」(237頁)という言葉の中には、「きちんとした」とか「自分自身」とか、曖昧な概念が用いられているにも拘わらず、子どもには力がある、とした点で、私の思いと一致する。
 そんな子どもを取り巻く昨今の事情が、「情報肥満」(249頁)であるという指摘も、肯ける。そして、それが子どもではなく、大人の問題そのものであることも。
 それでいて、このベテランの著者は、親を大人として見過ぎているような気もする。今の大人は、実に子どもである。私もその非難を避けられない。大人として成熟しておらず、依存心もあるがゆえに、子どもたちと同様に子どもとして、戸惑っているかのような部分がある。子どもが、いつの間にか、なし崩しに、大人として立っているようになった、というふうなイメージである。
 だから、子どもと向き合えない部分もあるし、子どもの居場所をこっそり準備しておくような余裕も抱けない。そして、その理由を、一つ上の世代に問うことさえも、ありうるものとしている。
 とはいえ、今の時代における緊急の、そして必需の問いを、投げかけていることには間違いがない。その眼差しは的確であり、傾聴に値する。私たち親世代は、自分のことだと心して読むべきである。何より、未来から来た子どもたちをどう歓迎するのか、今態度を決しなければならない以上、どの親もが何かを改めなければならない。メディアに踊らされないようにしながら。




Takapan
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