本

『育児SOS! お助けアイディア口コミ・テク945』

ホンとの本

『育児SOS! お助けアイディア口コミ・テク945』
Baby-mo特別編集
主婦の友社
\880
2003.12

 分かりやすい本である。育児について何か困ったとき、昔なら親がいた。あるいは同世代のママたちと毎日話ができ、あるいは近所の誰それともなく様々なことを教え合って暮らしていた。
 この本は、医師や保育士、栄養士などの指導の下に作られたと書いてある。専門家がバックにいるというのも、安心できる一因である。しかし、カラー週刊誌のような構成でどこかファッション優先の雑誌に違いないと思わせるところがあるとなると、話は別である。とくに一問一問の質問が、つねに同じスペースで解決されていく構成には、やや目眩を覚える。
 それはともかく、この本の売りは、たぶん体験の声の多さであろう。
 ある困ったケースの紹介には、何人もの体験的意見が添えられている。本文は医師の解説文であるにしても、付箋紙が貼り付けられたかのような形で、さまざまな人の意見が並べられているのである。
 それは、同世代の人々の生の声という感覚で、読むママを安心させることだろう。医師の理論よりも、彼女たちは、仲間たちの体験談のほうが優先なのだ。理屈ではない、人だ、ということだろうか。ところが、こうした体験談が並ぶと、はたしてどれをどのように信用してよいのか、分かりにくくなる。ネットでもそうだ。一つの疑問に対して、各方面から回答が寄せられるが、どれを信じれば、あるいは優先すればよいのか、情報の渦の中では分からなくなる。
 カラー写真がふんだんに盛り込まれ、いかにも女性雑誌のようなサイズや写真構成をしているこの本であるが、全体的に、やはり雑誌のような感覚があることを否めない。グッズや服装など、本来のSOS問題とは関係のないような次元の話が次々と興されていく。そのような問題こそが、若いママたちの関心である場合が多いからだ。人付き合いのような問題を含んで解説してあり、全般的にライフスタイルを教えるようなこの本は、もしかすると、いんに育児という題材を利用したものの、その真の狙いは、若い人々に対して、一定の道徳を教えようとするものではないか、と私は勘ぐっている。もちろん返ってくる答えはノーであろうが、私は、このように分かりやすい編集で医師の権威の下に作られており、しかも自分と同様の人々の体験談が豊富に盛り込まれた、写真入りイラスト解説入りの週刊誌的構成の本が、案外若い世代の模範となりうることを、しみじみと感じ始めた。道徳の授業を忘れても、とびきり威圧的ではないこのような仲間意識の中で情報交換をするかのような知識が記された本であれば、今後も売れ続けることだろう。
 なんだか悪口のように聞こえたら済まないと思う。何でも目の前で一度見せてもらえなければ、解説文だけでは何の理解もできなくなった若い世代のママたちにとっては、分解写真のように、綿棒の使い方を指導してくれるこのような本は、きっと福音に違いないのである。
 さらに言えば、体験者としては、見ているだけで、実に楽しい本であった。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります