『生きるためのブックガイド』
岩波ジュニア新書編集部編
岩波ジュニア新書
\940+
2025.5.
いつも言うが、ジュニア新書は、決して中高生のためだけの本ではない。もったいない。大人も知るべし、である。当初は岩波新書の学生版だったが、それだけ読みやすくなったと言える。これは書く方も実は工夫が要る。なおさら手を抜くことはできないからだ。
本書はブックガイドである。だが、ユニークな特徴がある。「小説・物語」以外のブックガイドなのだという。
そう、本の案内であれば、小説系が主流を占めるかもしれない。もちろん、それ以外のものも混じるのだから、小説を禁忌とする必要はない。
私は、大学入試に失敗した後、文転した。そのとき、とにかく本を読まねばならないと考えた。受験の国語に当時『学燈』というのがあり、そこに50冊の読書リストがあった。私は一念発起して、それを読もうと決意した。
だから、編集部が知恵を集めて、こうした「ブックガイド」をつくるとなると、私はかなり信用するものである。今回は、執筆者が顔を出して、推薦するという形をとっている。3冊くらいが、一つのテーマで挙げられる。その人独自の視点やテーマがまず説明されて、それから1冊ずつ推薦するというような形である。
最初の部分だけを例示してみよう。まず説明されて「自分・人間を知る」という大きな一括りの中で、四人が本を薦める。「人生を生き延びるために」「身体という他者」「日本の中の他者」「世界を変えるために」と四人である。
細かくは割愛するが、その一括りだけを目的としている。挙げてみよう。「世界を知る」「生きるために」「未来を選ぶ」「想像・創造する」という具合である。
こうして、副題の「未来をつくる64冊」が全体に並ぶことになる。まずは一度全部目を通すのがよいだろうと思う。その人にとり、関心の強弱はあるだろうから、特に惹かれるところもあるに違いない。しかし、さほど関心がなかったかのような部門でも、紹介されてゆく中で、前向きになってゆくということもあるような気がする。
また、紹介者を知っている場合、この人ならそうだ、と思えるときもあれば、少々意外な分野だな、と思うときもあった。そのひとりをここに挙げてみようと思う。
それは永井玲衣氏である。哲学研究者という肩書きは知られるところだが、とことん「戦争」についての本を掲げたのは、私にとっては新鮮だった。偏見かもしれないが、もっとお洒落で、結論を出すより問うことを続ける人だというイメージをもっていた。それが、ここでズバリと戦争への対峙姿勢を示したのだ。
まず、「対話」は「話しあい」というよりも「聞きあい」として捉える方がよいと提案する。「対話」とは、「暴力ではなく言葉のちからで空いてとつながろうとすることでもある」と告げると、「いちばん拒みたい集団のあり方は、戦争です」と断言する。それは永久に声と言葉を奪うことでもあるからだ。
戦争についての語りでは、よく後に「しょうがないことだった」という言葉を聞くことに、筆者は怒りを覚える。しかも、そういう気持ちが自分の中にもあることを見つめている。そこで、原爆ということについての本を読む必要が起こるのである。「しょうがない」ことにさせないために、ひとびとが社会を変えようとする試みこそが、「社会運動」なのだ、とも言うのだった。だから、問い続けなければならない。そして、選ぼうとしつづけなければならない、とも言う。
さらに、最後に推薦するのが、この岩波ジュニア新書であるというのが、やや宣伝的に思われるかもしれないが、カント哲学入門としての『自分で考える勇気』であった。哲学書は、難しそうだが、「仲間と協力しあいながら読み進めるものなのだ」というヒントを掲げる。これは、永井玲衣の真骨頂であるとも言えるだろう。「哲学対話」というモットーが、こうして裏打ちされているように見えてくるのだ。著者の御子柴善之氏が言うには、「日本で過ごしているひとには実は身近な言葉だ」ということらしい。日本国憲法の前文に「恒久の平和」という言葉があるからだ。憲法がだから押しつけだとか理想論だとかいう、気分的な訳知り顔の者が、ここから消え去るような気がした。「自分で考える勇気」という題の意義についても、さらに触れる。戦争について「考える」こと、対話することには、確かに勇気が要るだろう。「たくさんの声をきくからこそ、自分で考えることができる」という言葉は、本書の意義をすべて締め括るほどの力をもっているのではないだろうか。「戦争を欲しないならば、本を読み、声をきき、一緒に考えませんか」と結ぶその短い紹介は、もっともっと注目されてよいと私は思う。

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